スペシャル・フォトギャラリー
BiSH、アイナ・ジ・エンドのスペシャル・フォトギャラリー。ここでしか見られない写真たちをぜひ、存分にご堪能ください!
INTERVIEW : アイナ・ジ・エンド

ミュージカル『ジャニス』を観に行った。歌割りも台詞も群を抜いて多かったアイナ・ジ・エンドが扮するジャニス・ジョプリンは本当にすごくて... 彼女の努力と亀田誠治の采配によりその魅力はより引き出され、SNSでは絶賛の言葉が相次ぎ、歌うたいとしてのアイナ・ジ・エンドが証明された見事な舞台であった。このインタビューは、そんな日本を代表する歌うたいが、少しだけリラックスして今の心情を話してくれています。そのことがとても光栄であるとともに、このインタビューを続けてきてよかったなって思えるのだ。
インタヴュー : 飯田仁一郎
文 : 西田健
写真 : 大橋祐希
BiSHに助けられました
──アイナさんは、先日までジャニス・ジョプリンの人生を描いたブロードウェイミュージカル『ジャニス』に主演として出ていましたね。本当にすごい舞台でしたよ。
『ジャニス』の期間中は、いままでで一番くらい辛かったですね。稽古中、精神的にここまで喰らうかなっていうぐらい涙が止まらなかったです。いかに自分に厳しく生きるかを考える、修行のような期間でした。でも、終わってから考えると『ジャニス』をやれて本当に良かったと思います。
──ジャニス・ジョプリンを演じる上で、どこがいちばん辛かったんですか?
いちばん辛かったのは、私がジャニスみたいに歌えないことだったんですよね。ジャニスの歌は、シャウトすることが多いんですけど、そのなかには怒りだけじゃなくて愛や優しさみたいないろんな感情が入り乱れていると思うんですよ。でも稽古をはじめた当初、私は荒々しいシャウトしかできなかったんです。歌いこなせてない自分に対して、納得がいかなかった。それがずっと辛かったですね。
──それほどジャニスの歌が難しかったんですね。
そうですね。何回も泣きました。でも泣いてる時に、共演者のUAさんが隣に来てくれて、泣き止むまでずっと背中をさすってくれたんですよ。UAさんのことが大好きになっちゃいましたね。
──最終的に歌いこなせた感覚はあるんですか?
ありますね。私が8月にコロナにかかってしまったんですよ。応援してくれてるみなさんにはご心配をおかけして申し訳なかったんですけれども、その療養期間中にジャニスのことを猛烈に調べたんです。ジャニスが好きだったニーナ・シモンやアレサ・フランクリンの楽曲を聴いて、映画も全部見てレポートにまとめたりしました。ほかにも、家の鏡の前で3時間ぐらいジャニスと全く同じ動きをやったりして、ちょっとずつ感覚を掴んでいったんです。そうやって彼女の歌い方を真似すると、ジャニス・ジョプリンという人のことが大好きになったんですよ。そのおかげで、全然苦しい気持ちがなくなりました。多分、私はジャニスを演じることを怖がっていたんだと思います。ジャニスを好きになったら、不安な気持ちが全然なくなったんです。

──なるほど。ジャニスを好きになってから、アイナさんのなかに変化はあったんですか。
ミュージカルのなかで「ひとりにしないで」とか「私には歌しかないの」みたいなことを歌うんですけど、それがより心に響くようになりましたね。彼女の寂しさや孤独に共鳴しちゃって、ジャニスが死んだ理由がわかるなって思う瞬間が増えてきました。心を一つにして歌うと、彼女の気持ちまで自分のなかに入ってくるようになりました。
──精神的にもジャニスに引っ張られていたんですね。
そうなんですよね。ジャニスを愛しすぎていました。しかも、こういう話って理解してもらえない事が多いんですよ。「自分の精神が歌に引っ張られているんです」って言っても、普通の人からすると「なにを言ってるんだ?」という風に捉えられちゃうから。
──それもまた大変でしたね。
BiSHの活動があってよかったです。『ジャニス』の公演が終わった次の日に山梨で〈SWEET LOVE SHOWER〉に出て、その翌日は大阪の〈RUSH BALL〉というスケジュールで、フェスに2日続けて出たんですよ。正直辛かったけど、この2日がなかったら、ジャニスのモードから抜け出せなくなってしまったかもしれないです。フェスでバチッとスイッチを切り替えられたのが本当によかったですね。BiSHに助けられました。

──BiSHは現在ライヴハウスを巡る〈FOR LiVE TOUR〉の真っ最中ですが、やってみていかがですか?
すごく良い時間になっています。ライヴハウスって心が通じ合える感じがしますね。最近は、清掃員に対して、BiSHのことを思い出にする準備をさせているような気がするんです。それってきっと辛いだろうなって思っています。だからこそ、清掃員にはそういうことを一切考えない瞬間を作りたいんです。「いまが楽しい」と思ってほしくてライヴをやっています。
──〈FOR LiVE TOUR〉を回りながら、感じることはありますか?
このツアーは自分の心の準備でもあるんですよ。この思い出をしっかり目に焼き付けておこうと思っています。メンバーの後ろ姿を見て、「チッチ(セントチヒロ・チッチ)は相変わらず小指が立ってるな」とか、「リンリン踊りが大きくなったな」とか、そういうことを思うようになりました。
──解散を意識するなかで、心境に変化があったんですね。
最近、涙もろくなってきたんですよ。ライヴ中に昔の姿を思い出して泣いちゃったりすることがよくあるんです。WACKの後輩のことを考えるだけでも、涙が出てきちゃいます。
──先日BiSのトギーさんにインタヴューしたんですけど、彼女が辛かった時期に、アイナさんに話を聞いてもらったと伺いました。
そうなんですよ。トギーと3時間ぐらい話をしました。私もUAさんに辛いときに助けてもらったから、悩んでいる人がいたら同じように接していこうと思ったんです。そうやって、愛は回っているんだと思います。
BiS トギーのインタヴュー記事はこちら