幽体コミュニケーションズのファースト・アルバム『文明の欠伸』でめぐる、音と言葉の旅

吉居大輝(Gt.), paya(Vo./Gt.), いしし(Vo.)(L→R)
paya(Vo./Gt.)の思考に長らく棲みついていた「文明の欠伸」という言葉の真意を探るべく、幽体コミュニケーションズは音と言葉の壮大な旅に出た。その道すがら、手に入れた重要なキーワードは、「バグ」や「幻」、「遊び」、「街」。どれも人間という生き物の不思議な特性を表す言葉だ。これらを手がかりに浮かび上がってくるのは、「文明」の最小単位は私たち一人ひとりであるという実感。そして今、このアルバムが新たな「文明」を育てていることに違いないだろう。幽コミが緻密に作り上げたファースト・アルバム『文明の欠伸』。その制作過程を掘り下げた。
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培ったアイデアを惜しみなく散りばめたファースト・アルバム!
■応募期間・方法
2025/5/14(水) ~ 2025/6/4(水) 23:59
https://ototoy.jp/contact/ より「プレゼントの応募」を選択し、「幽体コミュニケーションズ プレゼント応募」と記載のうえ、
・『文明の欠伸』を購入した際使用したアカウントの、メールアドレスもしくはX(Twitter)アカウント名
・購入時のキュー番号(「XXXXXXXXX」XXX点 ¥XXXXXX(税込) 購入完了のお知らせ(000,000)←この数字です)
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■対象ユーザー
OTOTOYにて、幽体コミュニケーションズ『文明の欠伸』の音源をまとめ購入いただいた方
※単曲購入は対象外となります。
■当選発表
ご当選者の発表は、賞品の発送をもってかえさせていただきます。
INTERVIEW : 幽体コミュニケーションズ

インタヴュー : 飯田仁一郎
文 : 石川幸穂
撮影 : 琴音
ずっと自分の中にあった「文明の欠伸」という言葉を解明したかった
──アルバム・タイトル「文明の欠伸」は、どのようにして生まれた言葉なのでしょうか?
paya(Vo./Gt.):「文明の欠伸」という言葉はずっと前から僕の中にあって、自然と口をついて出てくるものでした。これまであえて深く考えずによくわからないままにしていたんですが、今回この言葉と向き合って解明したいと思って、アルバムのタイトルにつけました。
「文明の欠伸」に集まってくる音や言葉をまとめていけば、幽体コミュニケーションズの作品として成立すると思い、そういう方法で制作していきました。
──ファースト・アルバムとして、どんな作品にしたいと思って作りはじめましたか?
paya:音楽的に方向を絞らず、自分たちにできることを全部やろうと話していました。
吉居大輝(Gt.):僕ら3人の重なる部分と異なる部分、その両方の幅をできるだけ広く表現できたらと思って取り組みました。
いしし(Vo.):多種多様の曲があって、その全部が幽コミの音になっています。いろんな側面を感じて、楽しんでもらえたら嬉しいです。
──今作はヴォーカル・ディレクションの変化や細かいレコーディング面での幅が広がった印象があります。そこに対しては自覚的でしたか?
paya:変わった実感はなくて、自分たちが表現したいものや音の出力の仕方を経験から少しずつ掴んできたのかもしれません。「幽コミの部屋」の中にあるものを整理して出していっている感覚ですね。

──幽コミの曲は調性がかなり変わっていますよね?コードは作曲の段階で決めているんですか?
paya:僕らの曲作りは本当にさまざまで、歌でも言葉でもコードでも、入れるところから入って穴を掘っていくイメージなんです。その穴が途中で繋がって、曲が完成します。
調性を決めるときの第一の基準は、僕たちが歌いやすい音程であること。そのうえでメロディとの相性を見てキーを決めています。
ギターに関しては、コードに合わせた伴奏的な部分はコードに合わせて決めているんですけど、吉居がよく弾くようなリード・ギターの部分では、キーにとらわれずに音色を重視するようにしていますね。例えば1弦の開放音と2弦の5フレットの音は音程は同じでも音色が微妙に異なってくる。それぞれの曲に合う音を選んで決めています。
──今作はギター以外の音もたくさん入っていますよね。
paya:フリューガーボーンや、アジアの民族楽器など、かなり多くの音を入れました。「文明の欠伸」という言葉を理解するうえで「文明」について考えたんです。文明って、すごく多面的で複雑なものですよね。その多様性を音で表現するにはたくさんの楽器が必要だと思ったんです。
いしし:歌に関して今回のアルバムから大きく変わったことは特にないかなと思うんですけど、payaさんに常に鍛えられている実感はありますね。男女のツイン・ヴォーカルという形をとっている以上、payaさんの声があった上で私の声がある。逆も然りで。ふたりの声がいちばん輝くバランスを大切にしています。今回も、payaさんからのディレクションや刺激を受けたからこそ録れたものだと思っています。

──いろんな楽器の音に関して、レコーディングは基本的にpayaさんが担当しているんですか?
paya:はい。ドラムとコントラバス以外はほぼ僕の部屋で録りました。ミックスも途中までは自分でやって、手が届かないところはillicit tsuboiさんにお願いしました。
──アルバムを通して、「春」や「秋」といった季語、「バグ」、そして「文明の欠伸」がテーマとして通底している印象があります。
paya:「バグ」についてひとつ話すと、文明がここまで発展してきたのは、人間が“幻”と付き合うのが得意だからじゃないかと思ったんです。言い換えれば、虚構を扱う能力に長けている。いまこうやって会話が成立しているのも、目に見えない“言語”という仕組みを共有しているからですよね。それってすごく不思議なことだと思うんです。
実体がないものを認識できて、それを積み重ねてきたからこそ文明が育まれてきた。「バグ」というのも本来想定されていなかったものが表出することだけど、僕たちはそれさえ取り込んでおもしろがることができる。その人間の特徴としての「バグ」や「虚構」、「嘘」や「幻」という言葉をたくさん使いたかったんです。
──吉居さんといししさんは「文明の欠伸」というテーマに対してどんなアプローチをしましたか?
吉居:言葉を扱うことやコンセプトを固めることはpayaさんの得意分野だと思っているので、基本的には任せていました。その分、ギタリストとして色々な方向からアプローチしました。
いしし:私はpayaさんの想像に全部乗っかれるように、常に万全な状態でいられるように心がけていました。制作の初期に、「文明の欠伸」を中心にした相関図を共有してくれたのですが、そこには難しい言葉がたくさん並んでいて。それを何度も読み返して自分の中に落とし込むようにして向き合いました。