お互い納得してゴールしたいから、先にケンカしとこうよっていう
──一方で、プー・ルイさんはビジュアルの見せかたやミュージックビデオに制作において限界を感じることはありましたか?
プー・ルイ : それはめちゃめちゃあります。YouTubeの再生回数が伸びなかったりするので。PIGGSの制作チームでは、映像の人が最後まで見つからなかったんですよね。
──いちばんお金がかかるところですもんね。
プー・ルイ : はい。映像はPIGGSのチームに欠けているところで、毎回違う人に頼んだりしていて。その時のいいものを出しているんですけど、予算もないので厳しいな、というのはあります。Ryan.Bも初めてアイドルの楽曲を書いているし、ミックスをやるプロのエンジニアでもないから、そういう課題があるという認識は全員が持っています。そこも一緒に成長していきたいね、というのがPIGGSの考えで、それ込みで声をかけてくださったという認識だったんだけど、そこがまず違った(笑)。
──PIGGSのなにが本質的な魅力なのか、という話になりそうな気もします。いつもと違う誰かが曲を書いたら、衣装を用意したら、それはPIGGSなのかという。
プー・ルイ : 私もブタ山さんが正しいのではないかっていう気持ちもあるから、1回やっちゃいたいよねというのがこの企画なんです。
ブタ山 : このままだとすれ違い続けてまずいから、とりあえず1回ぶつかろうと。
プー・ルイ : そういう打ち合わせをやりつつ、メジャーデビューに向けて盛り上げていくためにどういう企画をやるかの話し合いもするじゃないですか。制作物とは別で、プロモーションのほうを考えていくなかで、私はそんなつもりはなかったんですけど、ずっとつまんない顔をしていたらしくて。ずっと話が平行線で、顔が曇ってたらしい(笑)。それを見かねた高松さんが「最近プー・ルイさん、つまんなそうじゃないですか。そんなだったらもう対決しちゃえば?」というのが雑談のなかで出てきて、久しぶりにめっちゃ生き生きしてきて。たしかに両方やっちゃえばいいじゃんって。私は10年間、すべてを見せてきたので、だったらここも全部出しちゃって、ファンの方にも実はこういうことが起こっているんだ、というのを知ってもらおうと。アイドルがメジャーに行って、急にいままでの人が外されたりすることって実際にあるじゃないですか。
──それで失敗した例もありますからね。
プー・ルイ : こういうこともあるんだよって。だから一緒に考えようという感じです。
──僕からすると、ファンの人はもとからあるものについてしまう気がするんです。PIGGSを知れば知るほどファミリー的な繋がりが見えてくるわけで。そんななかでこういった構図を作ると、必要以上に敵対する可能性があるんじゃないかと。
プー・ルイ : すると思います。
ブタ山 : そこはもう一番不安です(笑)。
──間違いなくブタ山さんのほうが不利ですよね。
プー・ルイ : 私が言っておきたいのは、大きいレコード会社のかたじゃないですか。負ける可能性が高いのに、おもしろそうだからとこの企画に乗ってくださるのがかっこいいなと思っていて。私はメジャーとのやり取りは何度かあるのですが、同じ熱量でやれなかったときがいちばんつらかったんですよね。話し合ってるんだけど、時間なんで帰ります、と言われたりするのが悲しかった。でも、ブタ山さんは深夜2時まで打ち合わせをしてくださったりするんです。PIGGSと一緒にやりたい、PIGGSを大きくしたいという気持ちは同じなんです。なので誹謗中傷とか書いちゃダメだし、逆に泥くさくやってきた私たちをメジャーのクオリティーでぶん殴ってほしいなという気持ちもあります。ぐうの音が出ないくらいすごくいいものを見たい。
──でも、ブタ山さんは不安もあると。
ブタ山 : 先日、ファンにディスられる夢を見ました(笑)。どうしたらいいものになるか、本当にずっと考えているんですよ。いまのお客さんも納得してくれて、その外側にいる人に届けるためにやるので。全然知らない人がパッと聴いてもいいなと思ってくれるものを作りたい。いまのファンが大多数いるなかにこの企画を投げるということの意味ももちろんわかっているんですけど、負ける気ではやっていないので。音楽で勝ち負けというのも変なんですけどね。
プー・ルイ : 好みもあるので。
ブタ山 : (インディーズ側の)ラフを聴かせてもらっているんですけど、やっぱりいいなと思うんですよね。でも、負ける気でやらず、納得してもらえるものを作りたいです。
プー・ルイ : 私はプレイヤーでもあるので立場が難しくて。この間、メジャー側の曲を仮レコーディングしたんです。
──もうプリプロしているんですね。
プー・ルイ : ひとまず私だけ。そのときに、いまの制作チームじゃ絶対に出てこない感じだし、「5人で歌ったらPIGGSになるな」と思いました。素直にいいなと思った。やってみないとそんな気持ちにもならなかったと思うんです。それだけでもまず一個収穫がありました。だから、進めていくなかで、お互いにRyan.Bのこういうところがいいな、これも新しい発見があるな、というのがたくさん出てくると思うんです。その先でPIGGSがどうなっていくかが重要なのかなと。ほかのメンバーも歌ってみたら、「私はメジャーのほうが良い」ってなる可能性もあるし、SHELLMEはミーハーなので「いいっすねブタ山さ~ん」って取り入りだすかもしれないじゃないですか。
ブタ山 : それはやばいですね(笑)。
プー・ルイ : 本当になにが起こるかわからない。初期BiSだって松隈(ケンタ)さんがメインで曲を書いていたけど、難波(章浩)さんや津田(紀昭)さんに書いていただいたことがあったじゃないですか。そういうことはイヤじゃなくて。それは話し合いのなかで、企画としてもトピックとしても面白いなっていうのは全然あります。

──話を聞くだに、どちらも柔軟な気もします。
プー・ルイ : お互い納得してゴールしたいから、先にケンカしとこうよっていう。付き合う前にセフレしとこうよ、みたいなイメージです。付き合ってエッチして相性悪かったら最悪じゃないですか。
──その例えがいいのかわからない(笑)。
プー・ルイ : お試し期間だと思うんですよ。一緒に深い時間を過ごして考えたうえで、こういう人なんだと思って、よし、よろしくお願いしますというほうが長い付き合いになる気がするんです。
──それを企画にするのが面白いなと思います。いまよりも広がりがほしいというのはわかりましたが、目指すところをもう少し具体的に聞いていいですか?
プー・ルイ : 結構前から限界を感じていて。私たちのシングルのリリースにおけるプロモーション費って、ほぼゼロなんですよ。それでもEX THEATER ROPPONGIまで来れたのは奇跡に近い。それに、もともとの界隈が盛り上がっていて、そこから流れてきてくださったということもあるから、自分たちの実力とも思ってないんです。だから、ここから先は本当に難しいと思っていて。1,000人から先というのはクチコミじゃどうにもできないし、もっと広げていかないといけない時期なので、一緒にやりたいという気持ちがあります。やっぱり武道館や横浜アリーナはやらないといけないなと思うし、それが解散なのか途中なのかで全然違うと思うんですけど、私はやるんだったら解散ライヴじゃなくやりたいから。
──初期BiSよりも大きな規模を考えている。
プー・ルイ : じゃないと意味がないなと思います。呪いじゃないですけど、それを越えないとかっこよくないな、というのはあります。
ブタ山 : そこは一緒です。もちろんBiSを越える、BiSHを越える、いまいるアイドルのなかで一番を目指すというのは間違いなく一緒で。
──ブタ山さんの見据える目標はあるのでしょうか。
ブタ山 : 武道館が当然だとは全然思ってないですが、上限を決めたいなとは考えてなくて。いまイメージできるアイドルがみなさんいると思うんですけど、それを越える存在にしたいですね。本当に売りたいというだけですね。
プー・ルイ : 打ち合わせで出た会話で印象的だったのは、私たちは界隈が近いからBiSHを最高と思ってしまうフシがあって。だけど、アイドルをもっと大きく見たときに一番ではないですよね。その人にとっての一番はそれぞれあるとは思うんですけど、例えば地球規模で見たらTWICEはもっとすごい。その点、じつはブタ山さんのほうが私たちよりも大きい目標を見て話してくださってるんだなと思う瞬間は結構ありました。