
音楽を地球の裏側へ
1990年代中頃からPCの普及により、インターネットを通じてレコード契約を持たない独立型のミュージシャンが、国境を越え作品を発表するというアウトプットを得た。それから約十年。様々な問題も残っているが、アーティストが最高の鮮度で作品を届ける事ができ、リスナーはその熱量のままいち早くお気に入りの音楽達を手に入れる事ができる状況が整ってきた。全ての音楽を配信によって聴く事ができるようになった訳ではないが、遠くはなれた地球の裏側のリスナーに自分の作品を届けたいというアーティストが増えていくのは素晴らしいことだ。
そんな配信のメリットを最大限に生かし音楽制作を続けている南天というアーティストを紹介。音楽性はテクノ/トランス系ではあるが、民族的で和風テイスト、さらにはロックのダイナミズムを取り入れ、もはやカテゴライズできないほどの多様性をもっている。そのバイタリティは、音楽制作だけでなく映像制作からプログラミング、アートワーク、webデザインまでを自らこなすほどだ。南天の情熱はいつの日か地球の裏側まで届くに違いない。
(インタビュー & 文 : 池田義文)

INTERVIEW
—南天というプロジェクトを08年8月に立ち上げたきっかけを教えて下さい。以前はどのような活動をなさっていましたか?
南天(以下 : N ) : 制作に関する事の全てを自分だけで完結させる決心がついたと言いますか、ハラを括れた事が大きな要因でした。バックで協力してくれる仲間を得られたタイミングでもありました。南天の活動に至る前は、ニュー・エイジ系の楽曲作りをしていま した。オムニバスCDに参加させて頂いたりしていましたが、個人としてのアルバム制作には至っていませんでした。
—プロジェクト名にはどのような意味が込められていますか?
N : 特にないんです(笑) ただ、漢字を草書体で書いて”読めない”ような名前が良かったんです。「…なんだコレ? 」という印象的なイメージが欲しくて…去年の春頃にスタジオを作ったのですが、その時に植え替えた南天の木を見たらしっくりきてしまったんです。何故か(笑) 縁起モノを担ぐのが好きですね。
—音楽制作からプログラミング、webデザイン、アートワークなど全てを自らこなされていますが、それらはどのようにつながっていますか?
N : 一つのプロジェクトに多くの感性が注がれて良いものを生み出すのもアリですが、解釈によっては不純物を含んでしまう可能性も感じているんです。大変ですし効率も悪いですが、本当の”自分の作品”を貫く事によって、説得力に繋がれば…と思っています。勿論危険性も孕むのですが、実は本来あるべき自然なスタイルなのかもしれないと感じてきています。
—南天の音楽はTrance、World/Ethnic、和風など様々な要素が調和した音楽だと思います。もっとも影響を受けたミュージシャンはどなたですか? また南天の音楽をご自身ではどのような音楽だと捕らえていますか?
N : やはりENIGMA、そしてSHPONGLEですね。音楽を聴けば、納得して頂ける所は多々あると思います。オリジナリティーが強いといいますか、流行とは違う目線だけれども普遍性を感じるアーティストが好きですし、自分もそうありたいと考えています。

—ダンス・ミュージックを制作する上で一番大事な事はどんなことですか?
N : 自分でも誰かにお訊きしたいくらいなんですが(笑) 、意識している事はあります。実験的な試みを忘れない事。だけれどもポピュラリティーやオリジナリティーを逸脱しない事です。
—今後ライブ活動等の予定はありますか? また、南天の音楽をどのような場所で楽しんでほしいですか?
N : ライブも視野にありますが万全の体制で臨みたいので、構想を練っている最中です。映像制作への着手もそうした意図があります。 フロアで楽しむのも良いですが、何か景色を眺めながら聴いてみるのも良いのでは? と思っています。ふとした時に聴覚と視覚がシンクロして、表現し難い雰囲気を味わえる事が自分でもあるので…
—配信という手段に関してはどのようにお考えですか?
N : 作り手と聴き手の時差が少ない事が最大の利点だと思います。定着は更に進むと思いますが、手に取れるパッケージの必要性も再確認しているところです。
—最後に初めて南天の音楽を聴くリスナーにメッセージをお願いします。
N : 南天はTechno/Trance系のWorld/Ethnic属、和風寄り&ややRock気味が持ち味です。異彩を放ちつつも”何だかカッコイイ”作品を心がけていますので是非一聴の程、宜しくお願いします。また、春にはPV/VJ方面の制作も開始しますので、今後の活動にご期待下さい。

リリース・インフォ

1stのCD版「the night blowing flower (disc edition)」が3/31日にリリース。
ボーナス・トラックを含めた全9曲ノンストップ・リミックス。
トラディショナルな要素を含むエレクトリック・サウンド自体は、既に多くの人々に受け入れられスタイルとして認知されている。しかし南天の生み出す作品は、安易にカテゴライズされ難い”+α”を感じさせる。幅広いジャンルを吸収し、ある種の独特な雰囲気を纏った”南天第1弾”
1、sign
2、evening walker
3、drizzle
4、garden
5、朧
6、vermilion moon
7、queen of derkness
LINK
- 南天 website : http://www.nanten-music.net
- 南天 myspace : http://www.myspace.com/nanten
- 南天 blog : http://profile.ameba.jp/nanten-music/

南天

ニュー・エイジ/インストゥルメンタルの作曲活動を経て、08年8月にelectric/ethnicを軸とした自身のプロジェクト:nantenを立ち上げる。同年10月に1stとなる"the night glowing flower"を公開し、配信をメインとした活動を開始。techno、tranceをベースに、world系のトラディショナルな素材やrockテイストを織り込み、独自のスタイル確立を目指す。制作に関わる全般を自身で受け持ち、09年春には映像制作に着手すると同時にCDでのリリースも開始する。
