「ありのままが最高」で終わりにしたくなかった
——なるほど。ここからは1曲ずつお伺いします。まずアルバムの1曲目を飾る“MY BODY IS CUTE”はかなりポップな楽曲に仕上がっています。
詩羽:歌詞がストレートなので力強く歌うと重すぎると思ったんです。だから曲調は可愛くポップにしました。これは“招き猫”のMV監督で、私の大学の先輩の高木美杜さんと作った『MY BODY IS CUTE』というショート・ムービーが元になっています。そのショート・ムービーは、コロナ禍真っ只中で登校もしていなかった大学時代に、定期的に作っていたものでした。内容は、そのときの私の思想を美杜さんに伝えて作った1分の映像です。これからソロ活動をはじめるうえで、そのときは伝えられなかったことも、いまならもっと上手く伝えられるんじゃないかなと思って、歌詞を書きました。
——歌詞はどういうものを伝えようと思ったんですか?
詩羽:タイトルの通り「自分の身体は可愛いんだよ」というメッセージですね。自分の身体にコンプレックスがあっても、結局全部最高って思えたらいいよねという思いがあったんです。自分のコンプレックスを変えようとするのもいいし、変えなくてもいい。自分の身体を愛していこうということを伝えていますね。
——「ありのまんまはサイコーなんだ 強く変わることも正解なんだ」という歌詞は、普段詩羽さんがMCなどで言っていることにも通じてきますよね。
詩羽:ここは「ありのままが最高」で終わりにしたくなくて、「強く変わることも正解なんだ」という言葉を続けました。ありのままが正解だと思うあまり、変わることが正しくないと思っている人も多いと思うんですよ。でも自分が好きじゃないからこそ変わろうとするのも正解だし、そのままを大事にしていくのも正解だし、どっちかを間違いにする必要はないと思うんです。どっちも正しいからどっちでもいいんだよ、ということをストレートに伝えました。
——「好きなキャンディーの味はなに?」という歌詞はどういう意味を込めたんですか?
詩羽:「他人に好きなものを聞くのってその人が好きな証拠」という言葉を、ある映画で観たんですけど、それってすごく良いなと私は思ったんですよ。「あなたの好きなものはなんですか」という意味合いで「好きなキャンディーの味はなに?」という歌詞を入れました。「好きだ」という意思表示をするために、あなたの好きなものを聞いたという感じです。
—— “人間LOVER”はどのような想いで制作したんですか?
詩羽:去年の夏頃に「人間大好きモード」になっていたんです。ドラマ(『最高の教師 1年後、私は生徒に■された』)にも参加して、そこで友達がたくさんできたんです。友達と遊んだり、飲みにいったりして、「人間めっちゃいいやん」というターンがきて、これは歌にしないといけないと思って作りました。でも歌詞はわざと皮肉っぽく作りましたね。人間が嫌いな時期もあるからこそ、あえてすごく明るく元気な曲調にしました。
——歌詞には皮肉がこもっているんですね。
詩羽:皮肉ですね。人間すげえなと思いもありますけど、自分はそっち側じゃないとは思っているので、そういう気持ちをわざとポップにすることで皮肉っぽく聞こえたらいいなと。
——ちなみにいまはどんなモードなんですか?
詩羽:いまはどっちでもないですね(笑)。人間どうでもいい期。猫でいっぱいいっぱいなので、猫大好きモードです(笑)。
——続いては“magichour”です。マジックアワーとは日没前の空を指す言葉ですが、この楽曲はどういう思いを込めたんですか?
詩羽:私、空が好きなんですよ。自分の愛情表現のひとつとして、親しい人に空の写真をよく送るんです。マジックアワー自体が好きで、写真を撮っても綺麗ですし、この曲はその単語から作りましたね。
——「戦うことから逃げてしまう 切ない想いに向き合う強さを 変わりたいよ」という歌詞が印象深いですが、「変わりたい」と思ったのには、なにか理由があるんですか?
詩羽:マジックアワーの切なさから曲を書いたのでこういう歌詞になりました。戦うことから逃げちゃうのって後悔に繋がることが多いから、そういうときに変わりたいと思うのかなと。
——「大人は子どもの夢を笑う その子どもはいつか大人になる」という歌詞にはどういう想いをのせているんですか?
詩羽:これは大人に対しての言葉です。「子どもの夢を笑うと、その子どもが大人になったときにそういう大人になっちゃうんだぞ、そうなっていいのか」という意味も込めています。私はずっと子どもでいたいと思っているから、大人アンチとして書きました。この曲でいちばん気に入っている歌詞ですね。
