“歌う”というより“話す”に近い感覚
ーー先行してTr.05に収録されている『ACHE in PULSE』のMVも拝見させて頂いたのですが、とても抽象的で、かつ神秘的でもあり、また絵画的だったのが印象的で、攻めまくりのソリッドな仕上がりが本当にカッコよかったです。
hotaru:今回、MVやアルバムのジャケットとかブックレットなどのデザイン周りを一括して元木さんというクリエイターさんに作っていただいたんですが、ジャケットワークと並行してMVの企画の方も進んでいて、かなり初稿の段階からボクだけじゃなくてメンバーからも「良いね」ってイメージ固まっていたので、非常にすんなりと仕上がったというか、逆にジャケットの打ち合わせですり合わせたイメージを、MV制作にもそのまま落とし込んでいただいた形でしたね。
ーージャケットやMVも含め、ビジュアル面で描いてきた世界観が視覚化されると、自分たちの中で抱いてたイメージがよりギュッと固まるような気もするのですが、その辺りの皆さんのファーストインプレッションをぜひお伺いしたいです。
hotaru:ボクとしては、本当におっしゃって頂いた通りで、ストーリーの流れをすごく抽象的ではあるんだけどアーティスティックで、かつ要約していただいような印象で「この先どうなるんだろう?」とか物語の動向が気になるような演出をしてくださったと思うんですね。この曲は最近の楽曲の中でも、かなり抽象度が高い楽曲だと思っているんですけど、その特徴を上手く捉えていて、非常に芸術性が高い映像作品として仕上げていただき感動しました。
Tom-H@ck:僕もhotaruが言ってくれた通りで、ストーリーはもちろんなんですけど、そこに”MTYH & ROIDってこういう感じだよね”という我々のイメージも要約して組み込んでくれていて、すごいスタイリッシュですよね。
KIHOW:私もいまメンバーの話を聞いていて、全く同じ印象を受けていたんだなと感じたんですけど、非常に静的だなと思っていて、人物とか動植物とかがほとんど出てこなくて、無機質なMVじゃないですか。抽象的で余白が多い分、受け取り側も考える必要があって。むしろそれぞれの解釈が生まれる事で作品が完成するというか、そういったところが絵画とか、それこそ彫刻のような芸術作品に通ずるし、アーティスティックだなと感じた部分でもありますよね。

ーー個人的にも同じ感想で、非常に反芻しやすいというか、アルバムを通して聞いて、このMVを見たら、またアルバムが聴きたくなるような、吸い込まれていくというか、このサイクルを繰り返すことでより解像度が上がってくような感覚を覚えました。
KIHOW:吸い込まれてく感じ、分かります!ぜひアルバムと併せてチェックしていただきたいですね。
ーー先ほど「よりブラッシュアップしたMTYH & ROIDを〜」という話題で、一例としてアルバムの曲順についてをお話頂きましたが、より具体的に楽曲面でその点を意識した部分についてお伺いしたいです。
Tom-H@ck:そうですね、もちろん1曲ずつ込めた部分はあるのですが、Tr.03の『MOBIUS∞CRISIS』という楽曲を例に挙げますと、この曲は恐らくMYTH & ROID史上、最も音数が少ない曲になるんじゃないかな? 基本的にはボーカルとドラムとベースのみで、サビで楽器がぼちぼち入ってくる、みたいな構成なんですが、コレは完全にトレンドで、ベラ・ポーチとか、数年前のビリー・アイリッシュとかからの流れというか、いまの流行りを更にモダンに、なおかつMYTH&ROIDっぽくもう少しデジタルチックに解釈したらどうなるかな?って感じで作ったので、新しいアプローチの模索でもあるし、意外とこういう何度も繰り返し聴きたくなる曲って需要があるのかなとも思っていて、ぜひそんな点にも注目して聞いてみて欲しいですね。
ーー音数が少ないとなってくると、必然的によりボーカルが際立ってくるのかな?と思うのですが、KIHOWさん的にはこの曲について、歌い方など何か意識された点などありますか?
KIHOW:メロディの影響もあるとは思うんですが、自分としては特に何かを意識するようなことはなく、逆に自然と歌えたっていう印象ですかね。“歌”として表現している感覚が結構薄くて、それこそ”話す”に近い感覚で録っていけたんですよね。音に委ねているというか、もちろん楽曲によっては「ここは感情を込めて」とか「ここはがなるように」とか意識的に録ることもあるんですけど、もうただそこにある音に沿って歌ったという印象のレコーディングでしたね。
