
埼玉音楽シーン相関図

――今井くんって農業もしてるよね?
今井 : そうそう。ライヴ入ってる日は、仕事が終わってから行っています。
――一番きつかったことは何ですか?
今井 : 色々言ってくれる人が増えちゃったことですかね。みんな「何とかしたい」と思ってくれるんだけど、色んな意見が出すぎちゃって、気持ちは同じなのに案がまとまらないことが多かった。そのまま人間関係がすれ違っていっちゃったり... 。

――でも、そこでBLUE FORESTとの関わりを今井くんや山崎さんが辞めなかったのは何故?
今井 : 僕らがs-explodeとして活動していくためには必要な場所なんですよ。
山崎 : やっぱりここで良いもの(ライヴ、やりとり)をいっぱい見てきちゃったので、思い出が詰まってるんですよ。ここで色々な繋がりが生まれたし、たくさんの人達と関わってきたんで。それだけのために離れられなくなってる。またみんながここで何かをやりたくなった時のために残しておきたいんです。
――他の場所でそれはできないんですか?
山崎 : あのロケーションといい、ステージに柵が無い感じといい、バー・カウンターといい、何か魅力があるんですよね。BLUE FORESTには。
――現在、山崎さんと今井くんは無給で働いているんですか?
今井 : そうですね。アルバイトで働いてくれている人やPAさんには、ちゃんと給与は支払われていますよ。
山崎 : 僕らの場合は、お金じゃないからね。
――人件費やお金周りのことは今井くんが?
今井 : そうですね、一応帳簿は付けてます。
山崎 : 今井くんは今バンド・マンというよりライヴ・ハウス・マンになってきてるよね(笑)。
今井 : 俺はバンドがやりたいの! バンドとしてここを借りたいんですけど、みたいな(笑)。
山崎 : どんどん一人でも弾き語りやったり、変なノイズ・バンドでライヴやったりしてるもんね。
――一人でもやらなきゃ、埋らない現状があるんですね?
山崎 : そうですね。俺も弾き語りやったり、DJ始めたり。今までならみんなやらなかったことをやってる。そういう意味で音楽の幅は広がったよね。
今井 : 何か時代に試されてる感じもしません?
山崎 : するする(笑)。
――BLUE FORESTにはどんな層の人を呼びたいですか?
今井 : まず、地元バンドに出てもらいたい。あと高校生バンドにもっと使ってもらいたいなあ。バーに遊びに来る女子高生に「一緒に企画やろう」って言ったりしてますもん。
山崎 : 女子高生ってところがいやらしい(笑)。
今井 : 高校生に1バンド1万円で出てもらって、10バンド集めてくれって。でもみんなとちゃんと音楽の話をしたいから、1バンドごとにじっくり清算してたら「門限あるから」ってキレられたりもしてます(笑)。
kussy : でも若いバンドっているんですね。
山崎 : MORTAR RECORDに来る高校生、みんなバンドやればいいのにって思うし、言ってますよ。音楽が好きならプレイヤーになりたい気持ちはどっかにあると思うから。

――今回のコンピレーション『SAITAMA LOCAL MUSIC RECONSTRUCTION』で埼玉の音楽をまとめたかった理由は?
今井 : 東京は渋谷や下北沢のように地域同士の関係が密接だから、その分選択肢やチャンスが増えると思うんです。埼玉の音楽シーンも各地域間で連動させたかったんですよね。そのための基盤を作りたかったんです。でも俺が埼玉のコンピを作ると熊谷に偏りすぎちゃうから、kussyさんに相談を持ちかけました。
――現状、地域同士の関係は?
今井 : やっと入り口に立ったというか、色んな人との信頼関係が生まれてきました。
――地元のお客さんはどうですか?
今井 : そこが大事なキーワードなんです。地元の人に聴いてもらう術を今模索しているところで、そのひとつとしてこのコンピレーションがあるんですよ。
ヒキマ : 熊谷って、秩父から見ると羨ましいんですよ。ライヴ・ハウスがあって、地元で活動するバンドがいて、MORTAR RECORDのようなレコード屋がある。それって凄い大事なことだと思うんですよ。秩父にはTSUTAYAがあって一応委託という形で流通に乗ってないCDもおけるんだけど、全く機能してない状態だし。
――大宮にはみんなが集まるようなレコード屋はあるんですか?
Kussy : いや、なかったんですよ。
山崎 : でも日本のクラブ・ミュージック・シーンにおいてFragmentの存在は大きいと思うんです。そういう人が埼玉にいるって、すごいことだと思う。
Kussy : 今まで地元を意識することはなかったけど、昨年末ぐらいから埼玉のみなさんと絡ませてもらう機会が増えて、俺ももっと頑張らなきゃだめだなって思ったんです。ネットがあるから特に発信方法について問題はないと思っていたんですけど、個人のレコード屋やライヴ・ハウスに目を向ければ、また別のアプローチで発信することができる。まだまだもっと色んなことが出来そうだなって。
山崎 : それを営業って言ってしまうと、友達と繋がるのも営業感覚になってしまってつまらなくなりますよね。でも単純に言えば、音楽好きが友達を増やすということですから、何も難しいことはないなと。
――アンチ東京的な意識はありますか?
今井 : ないですね。恩恵も受けてきましたから。
山崎 : でも「ダサイタマ」とまでは言われたくないですよね。
一同 : (笑)。
今井 : あと、今回コンピレーションに参加してくれたバンドは、俺がこれからずっと付き合いたいと思っている人たちです。
アンテナを出してる人同士でリンクし出してる(kussy)
――今後、キーワードになってきそうなバンドはいますか?
ヒキマ : 秩父は… いないですね。
一同 : (笑)。
山崎 : 秩父出身にはSUNNYDAY HIT SINGERSがいるよ。
ヒキマ : バンドも僕たちも自分でケツを拭けるかが重要ですよね。どのバンドにも、バンドをコントロールする人間っているじゃない? その子がどう考えてどう動くかがバンドの未来のキーになるよね。バンド・マンは発信者でなくてはいけないし、現状を嘆くんじゃなくて、自分達で状況を作っていかなくては。今日、この場も、僕が行きたいと言って参加させてもらってるんです。熊谷と大宮だけでも十分語れるけど、僕が行って「秩父」という言葉を出せば何かしらに繋がるはずだと思って。
――では、熊谷はどう?
山崎 : 色々いますよ。最初観たときははへたくそだったけど、久々に見たら上手くなってる奴らが(笑)。
――そういうバンドが外に出ていけば、もっと面白いことになると思う?
kussy : 大宮もそこに向かい始めてる気がします。アンテナを出してる人同士でリンクし出してる。
今井 : 今は、埼玉が一塊になってゴー・サインを出すための準備期間なのかも。
山崎 : the telephonesやLOST IN TIME、凛として時雨が埼玉から出て行って刺激を受けている若い奴らが絶対いるから、ここからまた来ると思ってます。
Kussy : 凛として時雨とthe telephonesの対談を見たんですけど、MORTAR RECORDの話をしてたんですよ。地元から出っぱなしじゃなくて、ちゃんと地元の情報も発信してくれてる。
山崎 : このコンピを出して、「俺らも入りたかったです」って言ってくれるバンドがいれば、「もっと面白いことをこれからやろうよ。一緒に埼玉を盛り上げよう」って言えるんですよね。また、外の人に埼玉の音楽を知ってもらうことで、埼玉内外を繋ぐ太いパイプになると思うんです。
(今井、ライヴ・リハーサルのため、退席)
――the telephonesが埼玉アリーナでやったのは、結構影響として大きかったんじゃないですか?
山崎 : 彼らも「地元の人たちがたくさん来てくれて嬉しかった」って言ってました。
Kussy : the telephonesに対しては、どのバンド・マンも嫉妬してないですよね。人柄だと思います。4人中3人がライヴ・ハウスで働いてたのも関係あるかも。あと、北浦和キャラのままで推しているから、そこにぐっと来る人も地元の人間としては多いですよね。

――レコード屋として、ライヴ・ハウスとして、地元の若いお客さんに伝えたいことはありますか?
ヒキマ : 秩父に関してはライヴ・ハウスが出来てまだ2年目だから、一緒に育ちましょうって感じですね。高校生と話していると先生みたいになっちゃうんだけど、それが嫌で。最初は友達で良いと思うんです。
山崎 : 若い子たちがキー・パーソンになるには、俺らおっさん連中がどう支えていくかだと思うんです。俺らはポジティヴなことしか伝えられないですよ。俺らが今まで過ごしてきた10年15年はもっと厳しいものだったんだから。でも、若い子達を甘やかしたいのかと言われればそういう訳ではない。苦労の先が本当のスタート・ラインになると思うので。あと、Fragmentが大宮で何かやるってなったら、すごいことになると思うよ。それだけ人との繋がりが多いんだからさ!
Kussy : あ、やるしかないな。やる流れだ、これ(笑)。不定期ではやってるんですけど、確かにOlive oilとか DJ BAKUがツアーしたいって言ってきた時ぐらいなんですよね。まだ大宮の地に足が付いてない感じはするしな。近くやりますよ!
PROFILE
popcornimai(s-explode)
s-explodeと書いて「エクスプロード」と読む。その心は「ローカルシティパンク」。2010年11月にUSのBEAR RECORDよりunfair rootsらと4way splitを作成、リリース。US6都市東海岸ツアーも行い、活動の幅は地方都市から世界へ! 熊谷を根城に全国各地でライヴ活動を行うパンクス4人組「s-explode」。静と動を行き交う不穏なグルーブを纏い、ハイトーンのヴォーカルが叫び時にささやく様は、まるでホラー映画を見ているようだが、どこかニヒルで社会性の帯びた歌詞、それすら全てぶち壊すくらいのギリッギリのテンションのライヴは不思議とチャーミングでポップネスを秘めている。それはハードコアでもあり、パンクでもあり、ニューウェイブで、オルタナでもある。しかし彼らはどこに属さない、だからどこにでも行ける。s-explodeは現代のリアル・パンク・バンドだ!
popcomicimai official web site
モルタルレコード
埼玉県熊谷市にあるインディーズCD専門ストア。今年の1月に11周年を迎え、熊谷の音楽シーンを文字通り牽引している存在である。店主である山崎やすひろ氏は店舗も運営する傍ら、様々な音楽イベントも企画している。熱い音楽愛と人柄にミュージシャンからの信望も厚い。
Fragment
kussyとdeiiによるトラック・メイカー・デュオ。レーベル「術ノ穴」主宰。ヒップ・ホップを根底に様々な音楽要素を自由な発想で還元し、独自の音を生み出す。ジャンル・レスなアーティストへのプロデュース・Remix(ツジコノリコ、撃鉄、tengal6 etc...)をはじめ、2007年ワールド・カップ・バレーのCM音楽や映画音楽を製作するなどクロスオーバーな活動を展開。環ROYとの共作盤「MAD POP」(2008年)、2ndアルバム『vital signs』(2010年)は数々の有力媒体でベストディスクに選出され、シーンに強烈なインパクトを与えた。ライヴでは2台のサンプラーとPC、lenoの映像を用いて「DOMMUNE」「Sense of Wonder 2011」「りんご音楽祭」「REPUBLIC」「電刃」など大型フェスからクラブ、ライヴ・ハウスなど場所を問わず出演。2011年9月『鋭 ku 尖 ル』をリリース。2012年2月には初のインスト・アルバム『narrow cosmos 104』をリリース。