2025/05/14 18:00

Ehtereal 『initial E』

初期プレイボーイ・カーティを手掛けたプロデューサーでラッパー、エシリアルによるソロ作。高めの声質で歌心のあるリラックスしたラップ面、レイジやプラグに近いシンセを使いつつもソフトに仕上げたサウンド面ともにプレイボーイ・カーティとの繋がりをはっきりと感じることができる。しかし、近年プレイボーイ・カーティが取り組んでいるようなシャウト気味の発声やハードなビートはなく、ラップもビートもひたすらナーディでユルユル。レイジやプラグを目指して作ったというよりも、ゲーム音楽からの影響をトラップに落とし込んだ結果として近付いたような印象だ。スペイシーなシンセが効いたラストの「SUMITOMO!」がハイライト。

FattMack 『Here to Stay』

ファットマックのエモーショナルにメロディを歌い上げるラップは、ヤングボーイ・ネヴァー・ブローク・アゲインやロディ・リッチあたりと通じる現代の王道スタイルだ。本作のビート選びはいわゆるエモラップやメロウなトラップが中心だが、時々王道から少しはみ出すところがある。例えば「Forever Rollin」のヘヴィな低音とドラムはダブステップからヒントを得たようにも聞こえるし、「Rewind」のモコモコしたシンセはフューチャーベースっぽい。これらはほかの似たタイプのラッパーの作品ではあまり聴かない要素だ。「Body」での後ろに置いたオートチューンの歌声も面白い。斬新ではないが妙に引っ掛かりのある1枚。

Lou Phelps 『Chèlbè』

ケイトラナダの実弟でラッパーのルー・フェルプスによるソロ作。2曲を除いてケイトラナダがプロデュースしており、ハウスやディスコの要素を取り入れてJ・ディラ的な揺らぎを加えたサウンドに仕上げている。ルー・フェルプスのラップはクールでスムース、少しレゲエの香りが漂うもの。随所で聴かせるゆるい歌も心地良く、人懐っこいポップさを獲得している。客演は「After i」でリラックスしたキレキレのラップを聴かせるゴールドリンク、「Under My Skin」で気だるい歌を聴かせるノーノー・ブラックのみ。豪華ゲストと盛り上がるケイトラナダ作品とは違う、あくまでも主役のラップを中心に据えたような作品でもある。

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