2025/05/14 18:00

Mike G 『Palladium』

オッド・フューチャーの元メンバーとして知られるマイク・G。タイラー・ザ・クリエイターやシドの華に隠れがちな存在だが、そのザクザクとしたラップ・スタイルは濃い面々の中でも埋もれない個性的なものだ。本作では涼しげなメロウ路線やロック風味、人懐っこいシンセを使ったブーンバップなど、どことなく「オッド・フューチャーらしさ」が香るサウンドでそのラップを聴かせる。トラヴィス・スコット風の歌を取り入れた冒頭の「Top Gun」からガツンと来る格好良さ。その後もゆるい歌が心地良い「Can’t Complain」、生ギターが唸る「Champagne Colored Diamonds」など良曲が詰まっている。

sign crushes motorist, KayCyy 『SADDEST TRUTH』

アイルランドのインディ・ロック系アーティストのサイン・クラッシュズ・モータリストと、ケニア生まれのラッパーのケイシーによる異色コラボ作。ゴスペルの壮大さやフォークの穏やかさ、トラップの重厚さなど多数の要素を注入したサウンドは、ヒップホップ・リスナーのみならず多くの音楽ファンを唸らせるはずだ。優しいギターが沁みる「Carry On」などではサイン・クラッシユズ・モータリスト寄りの路線も楽しめるが、作品の肝は高めの声質で歌うようなアプローチも得意とするケイシーのラップ。オートチューンやディストーションなど声の加工も巧みに用いて、時にはヒップホップから逸脱するようなサウンドも見事に乗りこなしている。

Squadda B 『The Wonderful World Of Squadda B』

クラウド・ラップを代表するデュオ、メイン・アトラクションズのメンバーだったラッパー兼プロデューサーのスカダ・B。デュオ時代から交流があったダニー・ブラウンのレーベルに移籍して放った本作は、ブーンバップを少し交えつつも基本的にはローファイの美学と切なさが宿るクラウド・ラップ系の作品だ。「Everything」をライアン・ヘムズワースが手掛けている以外は全曲がセルフ・プロデュース。自身のラップを入れず客演に委ねた曲も収録し、自作ビートはインストも収めてプロデューサーとしての側面をアピールしている。しかし、本人の脱力感と歌心のあるラップもかなり魅力的。だからこそインストでの印象の変化に驚かされる。

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