REVIEWS : 088 ベース・ミュージック、テクノ (2024年11月)──草鹿立

“REVIEWS”は「ココに来ればなにかしらおもしろい新譜に出会える」をモットーに、さまざまな書き手がここ数ヶ月の新譜からエッセンシャルな9枚を選びレヴューする本コーナー。今回はオトトイ・アルバイト・スタッフで、東京アンダーグラウンドのクラブ・シーンにてDJとしても活動・回遊している草鹿立がテクノ～ベース・ミュージックのシングルをお届け。現場直送の最新のダンスサウンドをぜひ。

OTOTOY REVIEWS 088
『ベース・ミュージック、テクノ (2024年11月)』
文 : 草鹿立

Low End Activist『Municipal Dreams』

LABEL：Sneaker Social Club

孤独なグライム職人Low End Activistによる、今年2枚目のアルバム。先行シングルのジャケットが指し示しているのは、閉鎖された(閉店を余儀なくされた)、あるいはすでに取り壊されているレンガ造りの施設(と、淀んだ曇り空)。本作は、自身が育った団地でまさに経験した、ますます広がる格差や不平等、分裂、そしてそれによって引き起こされる社会的問題が投影された作品である。それゆえ、彼自身の半生が色濃く反映されており、例えば、“TWOC”においては、彼の団地では横行していたスバル車の盗難、それを想起させるような自動車の排気音が散りばめられている。全編を通してグライムの精神性に極めて忠実でありながら、サウンド面においても確かなクオリティ。ゴールディの“Inner City Life”がリリースされてから30年経った今でも状況は全く好転していない、むしろ悪化していくばかり。

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V.A. 『INTL​.PDCOMP003』

LABEL：Pressure Dome

ブリストルのアップカミング(というかもはや最前線?)なプロデューサー、Yushh主宰の〈Pressure Dome〉からの5周年記念コンピ。レーベルにゆかりのあるアーティストからPDと共鳴するニューカマーまでフィーチャーしていて、後半に進むにつれ次第にBPMが加速、よりフロアライクなトラックへと移ろっていく。特にパリのDesign DefaultによるパーカッシヴなIDM、〈Kindergarten Records〉のSha Ruが手がけたモダン・ダブステップは一際目立ちますね。そんな中でもophélieの“Tiptoeing Around”が個人的にはピカイチ。陰鬱なフレーズにトラップノリをかませつつ、その上で沼加減をキープ、途中ビートスイッチしたかのようにウワモノをあえて外す展開もたまらない。

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Rose Again 『Into All Lands』

LABEL：Amity

ブリストル関連でもう1作品。ラジオ・チャンネル〈Noods Radio〉のスタジオでもある、ハブ〈Mickey Zoggs〉を経営し、レーベル〈Bristol NormCore〉の主宰もするブリストルの顔役、Rose Againが珍しく(ソロ名義では初めて?)EPをリリース。カチアゲすぎないモダン・ステッパーズのA1“Sleepless Dub”や、エキゾチックな匂い漂うダンスホール“I Can't Lose You”、しっかり鳴る低音に3連符のキックが重なるジューク亜種“fwfwfw”など、バランスのとれた5トラックが収録。〈Pressure Dome〉っぽさもあるかと思ったら、彼も1曲、前述のコンピに参加してました。タイトなパーカッションやがベースのユニークさが今っぽくておすすめです。

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