聴き流せないものになりました
――こんな質問をしておいてなんですが、そんな心配は杞憂だったほどに「keinをそのままパッケージした」というのが納得の作品だったと思います。実際、お2人は現在のkeinで新作を制作するという過程でどんなことを感じましたか?
玲央:抜群にスピード感が上がってますね。そうじゃないとスタジオで曲を作る方法で、2時間で“Spiral”はできないですもん(笑)。「こうしてほしい」って言えばちゃんと返ってくる、それをやれる技術もあるというか。
眞呼:みんな、もう大人ですからね。「こうじゃなきゃ嫌だ」っていう人はいないというか、「これもいいよね」っていう感じもあるので。
玲央:それに、これはあちこちで話してきたことではあるんですけど、経験ということにおいて浮き沈みの〈沈み〉、悔しい思いをしたことがある人っていうのは自分のスキルがどんどん身についていくものだと、僕は思っているんです。だから、もしもこれまでが順風満帆だったら、たぶんこのスピード感は出ていない。眞呼さんもお休みしている期間があったからこそ、より人にダイレクトに伝えられるものというか、伝えたいっていうスキルが身についたんじゃないかなって勝手に思っていて……。たぶん、ずっとdeadmanを続けてたら、今こんな歌詞を書いていないと思います。
眞呼:確かに書けないと思います。恐らく、フラストレーションみたいなものがあって、今のこういう表情になったんじゃないかなと。
――このタイミングで眞呼さんがしたためた『PARADOXON DOLORIS』収録曲の歌詞の中で、印象に残っているものやいいものが残せたなという実感のある曲を挙げるとするならば、どちらでしょう?
眞呼:う~ん、どの曲がっていうのはどうだろう? 考えたことない(笑)。でも、全部言いたいことは言っているし、大きく見たときに話の起承転結はきっちりなっていると思うし、起きる事柄の副産物も含めて書いているつもりで。ただひとつ、嘘は書きたくないと。フレーズ的に気に入ってるところはあるんですけど、それがその曲の代名詞となるのも違うので。それを前提に、フレーズで言ったらやっぱり“Rose Dale”の〈「落ちる方が悪い」〉かなぁ。あとは“リフレイン”の〈生きてていいですか?死んではダメですか?〉。
玲央:基本的に眞呼さんは、歌詞を通して「ああしろ、こうしろ」とは言わないですし、問題提起であると思うんですよ。「今回もまたおもしろい歌詞を書いたな」という感想がひとつと、より分かりやすくストレートに、誤解を恐れずに言えば露骨な表現をしてきてるなっていうのは感じました。オブラートに包む表現ももちろんあるんですけど、「これで届かなかったら」って本人も思うところがあったんじゃないかな、と。
眞呼:受け取り方は、バラバラでいいと思うんですよ。同じ曲だけど、聴いた人それぞれが別の受け取り方をしながら「これ、私の歌だ」と思ったときに曲がその人のものになればいいなと思うので。
――結果、今回収録されている5曲が纏っている世界観は一貫性がありつつも、どれも一筋縄ではいかないカラーがある印象がありました。
眞呼:僕も曲に関しての印象は、「やっぱりフェイントをかけてくるんだな」と思いましたね。でもそうなったときに、「もともとkeinっていうのはそういうバンドだったな」と思って(笑)。そういうものを再確認したところがありました。
玲央:基本的にkeinって、ひとつの大きな柱からみんなが好き勝手に放射線状に自分のかっこいいと思う方向に進んでるようなバンドなので、元々まとめようとしていないんですよね。だから僕の場合も、とりあえず自分がいいなと思う曲を作ってみようという感じで作り始めて。
――それが、玲央さん作曲の“Puppet”でもありますね。
玲央:ちょっと変拍子を入れようとか、割とコンパクトで躍動感があって、みんなが歌って弾いて、さらに眞呼さんが歌っている画を思い浮かべながら作って持って行った曲ですね。一番こだわったのは、冒頭のささやき声。こだわったのがギターじゃないというね(笑)。そこからバンドインしたときに、本当はシャウトを入れようと思ってたんですよ。実際に入れてもらったんですけど、「なんか違う」って言ったら眞呼さんが笑い出して「それ!」って。
――実際に入っている笑い声は、そうして採用されたのですね! それこそ、人と人との制作で起こり得るものといいますか。
玲央:そう。それに、そのときの感覚をすごく大事にしているというか、自分の感覚を頼りに作っていった感じはありますね。それは、全曲そうなんですけど。
眞呼:やっぱり、(人が)いないとわからないですからね。その場にいることによって答えが見つかるというか。
――ギターの部分でも、aieさんと玲央さんとではアプローチの役割が二分されているところはあると思うのですが、お2人の中でその点に関するやりとりもあったんでしょうか?
玲央:言葉のやり取りは一切してないんですよ。以前までのkeinもそうだったんですけど、かっこいい表現だとギターで会話している状態ですね。もっと言ってしまえばベースに対してもそうで、攸紀くん(Ba)が弾くのはルート弾きの安定感のあるベースというよりもメロディー楽器としての要素が強いんで、弾いているところを目で追いながら「(ギターは)こうしたほうがいいな」っていうのを考えている感じです。keinって、音源でもライブでも同期を一切使わないので、だからこそレンジを広げることを考えたときにアンサンブルでどうにかするしかないんですよね。バンド内で完結しなきゃいけないっていうのは実は難しいことであり、おもしろいことでもあるんですよ。
――バンドごとの手法によって成り立つアンサンブルがそのバンドの個性にもなりますもんね。こうして仕上がった『PARADOXON DOLORIS』は、5曲というボリュームに比例しない程の重厚感のある作品になったと思います。
玲央:わかります、そうなんです! ミックスのチェックの段階で何十回と聴いていると、5曲なのに疲れるんですよ(笑)。でも、疲れるっていうことは意識して聴いているっていうことですし、聴き流せないんですよね。自分でも、「重量感のあるもの作っちゃったな」って思いました。
――そして、今作制作時に想定していた東名阪ツアーが間もなく始まります。今ツアーでは、“People”が会場限定シングルとしてリリースされるんですよね?
玲央:“People”は既存曲なんですけど、だいぶかっこよく録れましたよ。今回は新譜のリリースツアーでもあるので、今回の5曲が入ることで昨年とだいぶライブの色が変わって見えると思うんですよ。自分自身も新鮮な気持ちでできると思いますし、会場の規模感に関しても「躍動感のあるライブにしたい」という意図もあってあえて選んだ会場でもあるので、そういうライブにしたいですね。
眞呼:やっぱりkeinなので、当時の感覚も踏まえてやりたいなと。今の僕ということもそうなんですけど、「当時keinってこうだったよね」っていうことをちょっと考えながらやりたいかな。『PARADOXON DOLORIS』の楽曲は僕的には変化球だと思っているので、それを今、どうやって打ち出すかっていうことを見せられたらいいのかな、と。ある意味、攻撃性みたいなものは自然と出てきちゃうんじゃないかなと思っています。
編集 : 西田健、菅家拓真
高純度のkeinを味わえる1枚
LIVE INFORMATION
TOUR'2024「PARADOXON DOLORIS」
11月23日(土)
NAGOYA JAMMIN'
OPEN 16:30/START 17:00
INFO.ズーム
TEL:052-290-0909(平日12:00~18:00)
11月24日(日)
NAGOYA JAMMIN'
OPEN 16:30/START 17:00
INFO.ズーム
TEL:052-290-0909(平日12:00~18:00)
12月04日(水)
Yogibo META VALLEY
OPEN 18:30/START 19:00
INFO.YUMEBANCHI(大阪)
TEL:06-6341-3525
12月05日(木)
Yogibo META VALLEY
OPEN 18:30/START 19:00
INFO.YUMEBANCHI(大阪)
TEL:06-6341-3525
12月18日(水)
新宿LOFT
OPEN 18:15/START 19:00
INFO.DISK GARAGE
12月19日(木)
新宿LOFT
OPEN 18:15/START 19:00
INFO.DISK GARAGE
チケット一般発売 2024/11/9(土)〜
イープラスhttps://eplus.jp/kein2024/
チケットぴあhttps://w.pia.jp/t/kein2024/
ローソンチケットhttps://l-tike.com/kein2024/
INFORMATION
【公式HP】
https://kein-official.jp
【公式X】
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【公式YouTubeチャンネル】
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