終焉へと向かう中で見つかったターニング・ポイント──草野華余子「産地直送」特別対談〜uijin編〜

SSWの草野華余子が、その作家活動10周年を記念してセルフ・カバー・アルバムをリリースした。その名も、『産地直送vol.1』。ジャンルを問わず、様々なアーティストへの楽曲提供を行ってきた草野だが、彼女はどのようにして楽曲を作り、そしてそれらをどのように自分の歌唱に落とし込んだのか。OTOTOYではその秘密を探るべく、草野と楽曲提供を行ったアーティストとの対談形式のインタヴューを実施。まず、第1弾として草野がはじめて楽曲をプロデュースしたという、アイドル・グループ、uijinからありぃとやよいを招いて、話を訊いた。
作家活動10周年を記念したセルフカバーアルバム
INTERVIEW : 草野華余子, uijin(ありぃ、やよい)

草野華余子がプロデュースした“ignition”は、uijinが解散へと向かうなかで作られた楽曲である。激しいロック・サウンドに、刹那を感じさせる歌詞が乗り、終焉へと全速力で向かうuijinの姿を映し出している。その一方で、『産地直送vol.1』に呪録されている草野のセルフ・カバーバージョンは、未来を切り開く力強さを感じさせ、また違った魅力を感じさせる楽曲に仕上がっている。“ignition”はどのような想いで作られたのか、奇跡の復活を果たしたuijinについて、草野はどのように思っているのか。じっくりと迫った。
インタヴュー&文 : 西田健
写真 :星野耕作
仕事である以前に、人間として接してくださる
──そもそも草野さんとuijinの初めての出会いはどういう流れだったんですか?
ありぃ:華余子さんは、元々uijinのボイトレの先生だったんです。
草野華余子(以下、草野):元々、我儘ラキアというアイドルの立ち上げ期のボイトレを頼まれていて、そこでアイドルさんと接する機会があったんです。そこから人づてに「uijinというグループが歌唱力を上げたいから、ボイトレの先生をお願いしたい」ということで私が送り込まれました。それから半年くらいは歌い方を教えていただけだったと思う。
──草野さんから見て、uijinの第一印象ってどんな感じでしたか?
草野:私は〈TIF〉に自分でチケット買って行くくらいアイドルが好きだったんですけど、uijinは普段観に行くジャンルのアイドルではなかったんです。でも最初にライヴを観に行ったら「曲の相性よさそうだな」と思って。ステージで「今日死んでもいい」というくらいのパフォーマンスをしていたので、自分の精神性とは遠くないなと思っていました。だから会うのが楽しみでしたね。
──uijinのおふたりから見て、草野さんの印象はどうですか?
ありぃ:仕事である以前に、人間として接してくださっていますね。一個人を尊重して関わろうとしてくださる方なんだなと思いました。今も同じような印象です。
やよい:最初は「ボイトレ頑張るぞ」という気持ちで緊張しながら通っていたんです。華余子さんがすごくたくさん話してくださるので、いつの間にかお話し会みたいになっていました。
草野:喉の調子が悪かったら「じゃあ、タピオカ買いに行くか」とか言ってたよね(笑)。
やよい:もはや遊びに行っていました(笑)。レッスンしにいく感じではなかったです。リラックスしてて。
草野:uijinは、それぞれキャラクターはみんな違っていて。ひとちびちゃんはとにかく歌が上手くなりたいから、犬っころみたいに質問をたくさんしてくれました。それにMARVELの映画が好きという共通の趣味もあったので、2人で映画観に行ったりして。りんちゃんは初めて出会ったときに「歌がとにかく不安」だと言っていて、練習中に上手くできなくて泣いたりしていましたね。なので励ましにタピオカ買いに行きました(笑)。
ありぃ:私はタピオカ買いに行ったことない(笑)!
草野:だってさ、グループの今後についてずっと真面目に話してたから(笑)。でも、ありぃくんのMCや、この瞬間を燃え尽きようとする精神性はuijinのカラーの1つだなと思います。やよいとは最近飲みに行ったお店の話とかしてます(笑)。uijinが一旦活動休止してからも、いちばん飲みに行っていたのはやよいでしたね。上手にサボったりとか、1番バイオリズムが似ていて。
やよい:そうだね。フィーリングがね。
草野:調子悪い時期が一緒だったりね。前世は双子なのかなとか言ってたよね(笑)。
やよい:きもいなー(笑)。
草野:やよいが言ってきたんだよ!(笑)。

──すごく仲がいいですね(笑)。
草野:そうですね。4人それぞれと個人で連絡とるぐらいには仲良しです。
──ボイトレの先生として指導していた縁で、uijinの楽曲をプロデュースするようになったんですよね。
草野:そうですね。私が人生で初めてアーティスト・プロデュースという形で、1曲丸々プロデュースしたのが今回リリースされるセルフ・カバー・アルバム『産地直送』にも収録されている“ignition”です。当時uijinは3年の活動期間を終わりに向かわせるということを聞いていたので、「こんな一生懸命ボイトレ頑張っているのに、終わりに向かう曲を書かないといけないのか」と思っていました。
──なるほど。2020年1月5日をもってuijinは一度終幕するわけですが、その発表前の時期に曲を書かれていたんですね。
ありぃ:華余子さんが関わりだしたのはuijin後期でしたもんね。
草野:そうそう。「燃え尽きるような3曲を書いてください」ということで、uijinチームとコンセプトから話し合って作詞作曲させてもらいました。後の2曲と合わせて「終焉3部作」的な感じで、悲しみの涙を流しながらの制作でした。
ありぃ:一貫して「終わり」が傍にいるような感じでした。
草野:終わりに向かってアクセルを踏む曲(“ignition”)と、終わってもファンとの思い出は続いていくという曲(“bl∞ming days”)と、終わりだけどこれでよかったと微笑むことができる曲(“インパーフェクト・ブルー”)を書かせてもらいました。
