民謡クルセイダーズ 『日本民謡珍道中』
聴くタイミングを逸していてこのアルバムで出会ったが、ホームページにある「東京キューバンボーイズやノーチェクバーナが大志を抱き試みた日本民謡とラテンリズムの融合を、21世紀に再び再生させる」という文言に納得した。1950~70年代には洋楽と民謡を結びつける実験が盛んに行われていたのだ。民謡クルセイダーズはその精神を継承し、現代の技術とテイストで日本民謡をグローバルかつコンテンポラリーなダンス・ミュージックに組み替えて世界に提示してみせる。サルサ、メレンゲ、クンビア、ボレロなどのリズムをベースとしつつ、たっぷり効かせた隠し味のおかげで曲によっては多重なイメージが浮かんでくる。ダブ~エレクトロニカにサンバっぽいビートがなだれ込む “佐渡おけさ” は圧巻。ライヴの熱狂が想像できる。
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無果汁団 『ひなふトーン』
ショック太郎(作詞・編曲)ととんCHAN(作曲)が2020年に活動開始したユニットの3作め。「テクノロジー・ポップスの開拓者」を標榜するだけに、主に1980年代のシンセサイザー・サウンドを研究し尽くしたクォリティの高い曲がみっちり詰まっている。2代目シンガーひなふの「少年っぽい少女」声、温かみのある電子音ともあいまって、往時のテクノ・ポップ系音楽家が提供したアイドル歌謡を聴いているような気分に。クリフォード・D・シマックの小説『中継ステーション』(1964年)をヒントにしたコンセプト・アルバムだそうで、まさにレトロフューチャリズム。全編に満ち溢れんばかりのアンビヴァレンスが二人の知性と美意識を伝える。CDパッケージの細部まで趣向を凝らすこだわりにもほれぼれ。
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QUBIT 『9BIT』
Daoko、永井聖一、鈴木正人、網守将平、大井一彌からなる「令和のスーパーバンド」による栄光のデビュー・アルバム。ニコラップ・シーンから頭角を現し、LOW HIGH WHO?時代のポエトリー・ラップを経て「ラップ・シンガー」を名乗り岡村靖幸や米津玄師や小林武史と組んだトイズファクトリー期まで、Daokoが過去に取り組んできた多様なスタイルを総ざらいしたような変幻自在のヴォーカルが眩しい。それに呼応する幅広い音楽性──と歌本位に考えてしまうのは僕がガッツリ歌うDaokoを聴くといまだに少し驚くオールド・ファンだからで、もちろん全員で作り上げたもののはずだ──も圧巻の、現代最高級のオルナタティヴJ-POP。全体にそこはかとなくP-MODELっぽい感触が漂っているのは気のせいだろうか。