2025/03/13 18:00

人間がやれること、人間がやりたいことってなんだろう?

――同曲において「目隠し鬼」とは、現実に翻弄されているうちに心の声を見失ってしまった人間を指している。そんな目隠し鬼の自分たちに対して子どもの頃の無垢な自分たちが手を叩いて呼びかけている、その心の動く方向へと自分らしく生きてみようというメッセージを投げかけているそうですね。

souta:「子どもの頃の無垢な自分をもう1回取り戻そう」というテーマは“Crush Core”や“MIRROR”でも書いているので、ほんとずっと同じことを歌い続けているなあ……と自分でも笑っちゃいました(照れ笑い)。そんなずっと考えていることを、本を読んだり知識をつけたうえで今回歌詞にしてみたら、さらにはっきりと表すことができるようになったかなと思います。……大人になるにつれて社会の歯車にしっかり乗っかっていくのが社会人としてあるべき姿である、という暗黙の了解みたいなものがあると思うんですけど。

Tyrkouaz - Crush Core [MUSIC VIDEO]
Tyrkouaz - Crush Core [MUSIC VIDEO]

――ありますよね。日本人の人生のテンプレートがなんとなくあって、そこから逸脱すると異端児扱いされてしまうこととか。

souta:自分は他人の目線が一度気になると気にしまくっちゃうタイプなので、いろいろと気に病んでしまったり、社会のペースに合わせていると自分が本当に好きなものも見失うし、自分が何をしたいのかもわからなくなっていく……という現象に陥りがちで。だからいつも自分に言い聞かせるように「自分のやりたいことをもう1回思い返そう」と歌詞を書いているところはあって、「MEKAKUSHI-ONI」は今までで一番、ストレートに正直にその思いを書けました。それは「このメッセージはもっと広く伝えていく必要があるな」と直感的に思ったことも関係している気がしています。

――確かに2025年、情報や技術が飽和して混沌としているので、自分を見失いがちになっている瞬間があることは否めません。

souta:数年前までは技術の進歩によってハイスピードで様々なことが発展して便利になってきたけれど、AIが一般的になってきたことによってなんでもできちゃう時代に突入した印象もあるんです。そんな時代だからこそ「人間がやれること、人間がやりたいことってなんだろう?」と世の中に提示したい気持ちがあって。なんでもできちゃう時代だからこそ、人間が元来持っている「心」が大事だと思ったんですよね。

photo by Ayami Kawashima

rent:「MEKAKUSHI-ONI」はTyrkouazが発信してきたメッセージの集大成的な面もある気がしていますね。ジャケットやMVのモチーフにもなっている、最先端の技術であるVRゴーグルをつけている状態は、「最先端」や「現実」を見ているけれど心の景色は見えていない気がして。

souta:人間を「目隠し鬼」と例えるのは辛辣かもしれないけど(笑)、自分たちの心の声が聞こえなかったらそれはもう「鬼」じゃない? とも思うんです。「鬼さんこちら 手の鳴るほうへ」という昔から歌われてきたフレーズと、「子どもの頃の自分の声」がちょうどリンクしたのも良かったって。

――ずっと自分自身を鼓舞してきた哲学であり、世の中に発信したいメッセージが「目隠し鬼」というモチーフを立てたことでキャッチーに昇華されている印象があります。浮遊感のあるギター・リフも絶妙で、それもいいアクセントだと感じました。

souta:楽曲はポジティヴであってほしいし、ワクワクできて光っているものにしたいので、いつもサウンドは重たくなりすぎないようにしてるんです。ダークなニュアンスもポジティヴなニュアンスもどちらもあるのが自然だと思うけれど、世の中にそういう曲があまりないのでそれを自分たちなりのバランスで作りたいですし、ラウドなものもJ-POPも好きだし、好きなもののすべての間にいたいというか。型にはまらないことが自分たちにとっての自由であり、自然体なんですよね。今後もそういうものを提示していきたいです。

――ちなみにですが、相変わらずライヴを想定した曲作りはしていないんですか?

souta&rent:全然していなくて、絶賛ライヴに困り中です……(笑)。

――でもTyrkouazのライヴは、本当にライヴのことを想定していない曲作りなのか? と思うほど肉感的ですよね。

rent:クラブ・ミュージックが好きなので、フロアで盛り上がる曲展開みたいなものは身体に染みついていて、それが自然と作曲に反映されているところはあるかもしれない。「ライヴで盛り上げるためにこういう展開を作ろう」みたいなことは一切ないけれど、結果的にライヴで盛り上がるものになっているのかなと。

photo by Ayami Kawashima

――あとはTyrkouazがご自分たちの心の声を曲にしているから、心の解放が生々しく表れるライヴという場は相性がいいのかもしれませんね。

souta:確かに、その通りですね。自分たちの好きなものや哲学が表れた自然体の音楽だから、結果的に自分たちもワクワクするしライヴが盛り上がる。それってすごく健全だと思います。だから5月と6月に開催する自主企画対バンツアー〈MULTI PLAY2〉も自由な遊び場にしたいんですよね。

rent:〈MULTI PLAY2〉はバラエティに富んだジャンルごちゃ混ぜなイヴェントなので、「こういう音楽もあるよ」「こういう世界観もあるよ」と観てくれる人に新しいものを提示できるツアーにしたいですね。

〈MULTI PLAY2〉フライヤー

――MBTIだったりパーソナル・カラーだったり、生きているとあちこちカテゴリ分けばかりですものね。ジャンルを飛び越えて、デジタルと生音を心のままに組み合わせていくTyrkouazの楽曲たちは、どれも「心はそんなに簡単じゃないぜ」「もっと自由でいいんだぜ」と伝えてくれているなと感じます。

rent:音楽はいろいろと聴いてきて知識があるつもりだけど、人間のことってまだまだわからないな……って思っています(笑)。自分もまだまだわからないことがたくさんあって、わからないなりに考えながら進んでる……というのを歌詞にすることが多いんです。世の中には「常識」と言われるものが溢れているけれど、自分なりの正解を見つけたいし、みんなもそうやって生きていけばいいんじゃないかと思うんです。

souta:だからここからさらに頑張りたいですね。世界中にできるだけたくさん、自分のやりたい音楽やエネルギーを届けたいんです。

rent:そうだね。たくさんの人に自分たちの音楽を伝えて、みんなをワクワクさせて、今まで聴いたことがないような新しい音楽を、みんなが楽しんでくれるようなかたちで届けたいです。

編集 : 石川幸穂

実験的かつダンサブルな2025年第一弾シングル


ライヴ情報


自主企画 東名阪仙対バンツアー〈MULTI PLAY 2〉

2025年5月16日(金)
大阪 Yogibo HOLY MOUNTAIN
GUEST : NIKO NIKO TAN TAN
開場 18:30 / 開演 19:00

2025年5月17日(土)
愛知 CLUB UPSET
GUEST : Hello Sleepwalkers
開場 17:30 / 開演 18:00

2025年6月6日(金)
宮城 MACANA
GUEST : 80KIDZ
開場 18:30 / 開演 19:00

2025年6月13日(金)
東京 SPACE ODD
GUEST : aryy, safmusic
開場 18:30 / 開演 19:00

◼︎お問い合わせ
CREATIVEMAN PRODUCTIONS
03-3499-6669 月・水・木 12:00~16:00
https://www.creativeman.co.jp/event/tyrkouaz-multi-play-2/

◼︎チケット情報
オフィシャル最速先行(先着・イープラス) : 2月28日(金) 18:00〜3月23日(日) 23:59
https://eplus.jp/tyrkouaz/

前売 ¥3,500/学割 ¥2,000(税込/整理番号有/D代別)
※枚数制限一人4枚
※チケット分配可能
※営利目的の転売禁止
※未就学児童入場不可
※学割は入場時に顔写真つきの学生証の提示が必須となります。確認できない場合は一般チケットとの差額を頂戴します。
※チケットは体調不良なども含め、公演が延期・中止となる場合を除きいかなる理由に関わらず払い戻しや再発行は行いません。

Tyrkouaz のほかの作品はこちらから

PROFILE : Tyrkouaz


双子の兄 souta(Vo/Gt)と弟 rent(Dr/Cho)によるミクスチャーロックデュオ。 ドラムンベースを基軸にブレイクコア・ハイパーポップ・ガバ・サーフロックに至るまで、様々なデジタルロックサウンドを融合し、本格派志向の音楽ファンから支持を獲得している。

2023年3月にリリースしたファースト・フル・アルバム『turqouise engine』は〈TuneCore TOP50〉に突如ランクイン。 〈iTunes Store オルタナティブ トップ アルバム〉(日本)19位、〈Spotify new Japanese INDIE プレイリスト〉等にピックアップされ注目を集める。その変幻自在な音楽性でアウトプットされるエクストリームなライブパフォーマンスは各所で口コミが広がり、2024年3月、池袋 Admで開催された〈ブクロックチャンピオンロード〉で投票1位を獲得、同年4月、Zepp Haneda で開催された〈ブクロックフェスティバル〉に出場。同年 SUMMER SONIC への出演権を懸けたオーディション〈出れんの !? サマソニ !?〉において、応募総数約2000組の中から選出され、8月16日に開催された〈SONICMANIA〉のトップバッターとして出演を果たす。同年11月、自身初となる全国流通盤 『turqouise engine +』をリリース。 全国のタワーレコードスタッフによる、 まだ世間で話題になる前のアーティストをいち早くピックアップする セレクション “タワレコメン” に選出され注目を浴びる。

■Official Site : https://bio.to/tyrkouaz
■X : @Tyrkouaz_dnb
■Instagram : @tyrkouaz_dnb
■YouTube : @tyrkouaz5074

この記事の編集者
石川 幸穂

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[インタヴュー] Tyrkouaz

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