“愛の流れ”をカセットテープに乗せて──DEATHRO、セルフ録音&ミックスに挑んだ新作をリリース!

神奈川県央から、世界も虜にするロック・ヴォーカリスト、DEATHRO。OTOTOYに久々の登場です。なにはともあれ、まずは新作『ガラパゴス -GALAPAGOS』を聴いてみてください。あまりにもロウかつ、プリミティヴ過ぎるサウンドに度肝抜かれるはず。このサウンドの秘密をたっぷりと語ってもらいました。そして!このサウンドはカセットでこそ聴きたいでしょう!ということでOTOTOY限定でカセットテープ+ハイレゾ音源のセットを発売! インタヴューを読んだらこちらもぜひ。(編集部)
カセットテープ+ハイレゾ音源のセットをOTOTOY限定販売!
価格
2,500円(送料込、税込)
商品内容
・アルバムのハイレゾ音源データ (24bit/48kHz)
・アルバムのカセットテープ
・歌詞PDF(ハイレゾ音源データに付属いたします)
販売URL
https://ototoy.jp/_/default/i/440
※お申し込みが販売予定数に達した時点で販売を終了いたします。
※音源データはご購入いただいた時点でダウンロード可能となります。
※カセットテープの発送は注文後順次発送いたします(土日祝は発送作業をお休みさせていただきます)。
※配送元は東京より、クリックポストでお送りします。
※配送先は日本国内に限ります。
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セルフ録音&ミックスに挑んだ、自身5枚目となるアルバム!
DEATHRO - 圏央厚木IC (Music Video)DEATHRO - 圏央厚木IC (Music Video)
INTERVIEW : DEATHRO
神奈川県央No.1ロック・ヴォーカリスト、DEATHROがニュー・アルバム『ガラパゴス -GALAPAGOS』をリリースした。すべての楽器とヴォーカルを4トラックのカセットMTRでDEATHRO自ら録音、ミックスし、中村宗一郎(PEACE MUSIC)のマスタリングによって完成したサウンドは「え? デモなの?」と耳を疑うほどにロウ&ソリッド。ドラムの川又まこと(Not It? Yeah! / GUMMY BOYS)、ベースのYUKARI(Limited Express (has gone?) / ニーハオ!!!! )、ギターのIxTxOxP(UMBRO / THE BREATH)&小野寺陽多(ソドム)に支えられ、地元・愛川町から銀河系まで、反逆、抵抗、愛、孤独、パレスチナ解放etc.を叫びながら全10曲20分、一気に迷走するDEATHRO史上もっともパンクなアルバムに仕上がっている。
インタヴュー : 須藤輝
撮影 : 小野由希子
FOSTEX XR-7をハードオフ横浜長津田店で、700円で手に入れた
──アルバム『ガラパゴス -GALAPAGOS』ですが、まず音がヤバいです。取材用にもらった音源データを再生して1秒でブチ上がりました。DEVOの初期デモ音源みたいだなって。
あ、実はDEVOもめちゃくちゃ聴いてたんですけど、直接的にはあんまり関係なくて。1番でかかった出来事は、2023年に、今回のアルバムでドラムのRECと全曲のミキシングに使った1994年製のFOSTEX XR-7っていう4トラック・6チャンネルのカセットMTRを、ハードオフ横浜長津田店で、なんと700円で手に入れたこと。
──お安い。
ジャンク扱いで、ACアダプターが12Vだったんですよ。だいたい9Vがスタンダードだから、たぶん動作確認してなくて。ジャンク・コーナーから12Vのアダプターを持ってきて、その場で全トラックにギターを重ねてみたら使えたんで、これはいい買い物をしたなと。それまでは10代の頃に買ったKORGのD4っていう、コンパクトフラッシュに記録するデジタルのMTRでメンバーに渡すデモとかを作ってたんですけど、以降はそれもXR-7に置き換えてるんです。ただ、当時はこれで正式な作品を録ろうとは考えてなくて……2023年の11月にUSカンザスシティから、Ian Teepleのソロ・プロジェクトであるSILICONE PRAIRIEがやってきたじゃないですか。
──はいはい。M.A.Z.E.の招聘で。
SILICONE PRAIRIEのツアーに何箇所か帯同させてもらうなかで、僕の家に呼んだり神奈川のほうで遊んだり、けっこうコミュニケーションをとる時間があって。IanもSILICONE PRAIRIEの音源をカセットMTRで録ってたんで、彼に録音のプロセスとかをいろいろ聞いたんですよ。特に興味深かったのが生ドラムの録りかたで、マイク1本だけですごくよく録れる位置を教えてもらったんです。そのうえで、ドラムの録り音にコンプをめちゃくちゃきかせるといいバランスになると。プラス、ここ数年フェイバリットに挙げてるペルーのMøRbøっていう、2001年からやってるけっこうロングランのパンク・バンドがいるんですけど……。
──めっちゃプリミティヴな、南米ロウ・パンクですね。
彼らが2020年に出したアルバム(『¿A Quién Le Echamos La Culpa?』)も、全部じゃないかもしれないけど、ドラムはカセットMTRで録ったらしいという情報はキャッチしていて。ちょうどMøRbøのInstagramのストーリーズに、レコーディングのプロセスがアーカイヴしてあったんです。今回、僕もそれをマネして『ガラパゴス -GALAPAGOS』の制作過程をアーカイヴしたんですけど、MøRbøはドラムを録るときマイクを3本ぐらい立ててたのかな。かつ、そのマイクに紙コップを被せてたんですよ。
──部屋鳴りを抑えるみたいな?
そう。部屋鳴り感、エアー感をなくすために。だからIanから教わったマイク1本で録る手法と、MøRbøがやってた紙コップを被せる手法を実践したくなったというか「これ、もしかしたらいけるんじゃないか?」と。で、採用するかどうかはさておき、とりあえずそのセッティングでドラムを録ってみることにしたのが、2024年の8月でしたね。ちょうど楽曲も10曲、アルバムサイズで出揃ってたんで、ドラムのまことさんになんのガイドもないまま叩いてもらって。「めちゃくちゃやりづらい」って本人は言ってましたけど。
──僕もDEATHROさんのインスタを見ていたんですが、ドラムのレコーディングで、緩衝材とかをシンバルに貼ったりしてミュートしてましたよね。
僕はあんまり倍音がない感じのドラム好きで、ミュートしまくると音の伸びがなくなるんですよ。例えば金物だったら「バシャーン」じゃなくて「バシャッ」にしたい。だから普段からミュートはしてるんですけど、今回はマイクにも紙コップを被せたんで、その決定版みたいな。ドラムRECは、まことさんが叩き慣れてる曲を後回しにするという目論見で最後に“ときめき”と“NO HYPER”を残したんです。ところが、“ときめき”を録ってるあたりから、700円で買ったXR-7の録音ボタンがだんだん反応しなくなって。
──もともとジャンク品ですもんね。
しばらくそっとしておいたら「あ、いま録れる。よし、録っちゃいましょう!」みたいな。そんなこんなでなんとか録りきったものの、XR-7を家に持ち帰ったら熱を持っちゃって。再生はできるけど録音ボタンの回路が壊れたっぽくて、どうしようもなくなってSNSで「FOSTEX XR-7と同一機種か、もしくは同じシリーズを持っているかたがいたらお借りできないでしょうか?」と助けを求めたんですよ。そしたらタカミさんというかたから連絡をいただいたんですけど、実はタカミさんとは奇妙な縁があって。僕がDEATHROのキャリアをスタートさせて間もない頃、DODのエフェクターを集めていたんです。DODっていうのはソルトレイクシティで70年代からやってる老舗メーカーで……脱線しちゃいますかね?

──いいですよ。続けてください。
「GRUNGE」とか「DEATH METAL」とか「PUNKIFIER」とか、わかりやすい名前のディストーション・ペダルを作ってるんですけど、それっぽい音は出ない。例えば「GRUNGE」だったらゲインが0でもめちゃくちゃ歪んでる、聞かん坊みたいな感じで。そういうちょっと変なエフェクターのレヴューを、タカミさんがご自身のブログで書いてたんですよ。
──なにか引かれ合うものがあるんですかね。
そのタカミさんから、FOSTEXのXR-7じゃなくてXR-3っていう、いわゆる下位機種の4トラックMTRをお借りして。そこからベースとギター、ヴォーカルを録っていったんで、本当に渡りに船というか、ありがたかったですね。
──ギターとヴォーカルはDEATHROさんの家で録っていませんでした?
そう。ドラムは西調布のStudio REIMEIの部屋を借りて録っていて、ベースも大きい音でモニターできるように、YUKARIちゃんの家から近い小岩BUSHBASHの向かいの2Timesで録ったんですよ。で、ギターもREIMEIで録るつもりだったけど、イトーちゃん(IxTxOxP)のレコーディングでビッグ・トラブルが発生して……REIMEIに集合して、準備して「よし、じゃあ録りましょう!」となったところで、マスターのカセットを家に忘れてきたことに気付くっていう。
──なにもできないじゃないですか。
日を改めるのもあれなんで、イトーちゃんに「カセットを取りに帰るついでに、ウチで録っちゃいませんか?」って聞いたらOKしてくれて。田舎なんで、夜の9時ぐらいに大きな音を出してもあんまり怒られないんですよ。イトーちゃんは2時間ぐらいで、神業で終わらせてくれたんで、そこで味を占めてオノちゃん(小野寺陽多)も僕の家まで来てもらってギターを録ったんです。ちなみに今回は全10曲中、イトーちゃんに6曲、オノちゃんに4曲弾いてもらってます。トラックを4つしか使いたくなかったのと、いまライヴでやってる4人体制でできることをやりたかったんで、音源のギターも1本で。そして最後に残ったヴォーカルは、もう自分の歌いたいタイミングで録る。これもずっとやってみたかったことなんですよ。
──ヴォーカルは、お風呂で録ってましたよね。
だいたいの曲はお風呂で録りました。逆にお風呂で録ってないのは“HIGHVVAY”、“ときめき”、“NO HYPER”の3曲ですね。一応、全部お風呂で録ろうと思ったんですけど、どうしてもリヴァーブがかかるというか声がガンガン響くんで、ピッチがすごい取りづらくて。いま言った3曲はわりと高い声を出すし、もうちょいデッドな環境で録ったほうがいいなと。
──ガレージでも録ってましたっけ?
ガレージで録ったやつは全部ボツになりました。4トラックなんで、ストックなんか残しておけないんですよ。だからガレージでボツになったやつはまたお風呂で録り直すっていう。パンチインもしづらいから基本は丸々通して歌わなきゃいけなくて、なかなか大変でした。でも最後、“HIGHVVAY”、“ときめき”、“NO HYPER”を自分の部屋で録ったらめちゃくちゃモニタリングしやすいし、声も出しやすくて。
──お風呂での苦労はなんだったんですか。
いや、部屋で録るまで、部屋のほうが録りやすいって気付かなかったんですよ。でも、お風呂で録ったやつはお風呂で録ったやつのよさがあるんで。あと、テープもわざと統一しなかったんです。今回はmaxellとAXIAとSONYの、当時品のハイポジテープを使っていて。テープ1本につき2曲録ったんで全部で5本、内訳はmaxellとAXIAが2本ずつ、SONYが1本かな。マスタリングのとき、中村さんから「統一したほうがよかったんじゃない?」って言われたんですけど。
──僕も、自分が録る立場だったら同じメーカーで揃えたいかも。
自分としては、メーカーによって録れかたの違いがあって面白かったんですよ。maxellは優等生というかわりと録ったまんまで、AXIAは肉付きがよくなって、SONYは繊細って感じですね。あくまで個人の感想ですけど。それに、曲によって質感が違ったほうが僕は好きっていうか、ギターとかも曲によって音色を変えたりして味付けするつもりだったし、アルバムは統一感よりバラエティを優先したいんです。

──ギターでいうと、“MOONLIGHT LOVE EMOTION”の音色がめちゃめちゃ好みです。
いいですよね。ああいうちょっとざらついた感じとかも、やりたかったんですよ。
──ちなみにこの曲のギターって、イトーさんですか?
イトーちゃんです。オノちゃんが弾いてるのは“HIGHVVAY”、“ときめき”、“NO HYPER”、“WRONGWAY”ですね。
──ああー。曲名のクレジットに「 (type-2)」とある、先行してシングルでリリースされた曲の再録が、小野寺さん。
そういうことです。オノちゃんはしばらくDEATHROから離れちゃうんで、アルバムのなかで比較的歴史のある曲を、卒業記念みたいな感じで弾いてもらいました。オノちゃんのギターも、特に“ときめき”と“NO HYPER”は、イトーちゃんと差が出るようにわりとマッチョな音を狙っていて。とある人から「ファミコンのギターの音みたい」って言われたんですけど、それはそれでけっこう狙い通りなのかも。
──ちょっと話が戻りますが、まことさんのドラムを見切り発車的にカセットMTRで録ってみて、それが気に入ったから全部これで録っちゃえと?
はい。我ながら、今回のドラムはめちゃくちゃよく録れたんで「これはいけるな」と。いま振り返るとバックアップもなにもなかったんで、途中でテープが巻き込まれて切れたりしたらどうしようって心配もあったし、古い機材だから苦労も多かったんですよ。だから利便性ではデジタルには敵わないんですけど、やれることが限られてるよさもあって。「これとこれしかできません」という状況で、どうやってバリエーションを増やすのかとか。そこに関しては、けっこううまくやれたんじゃないかな。