一緒にいてすごく勉強になる人であり、いちばん理不尽な人
──出会ってから現在まで、Sundayさんのことで強く残っている思い出はありますか。
アツム:ある日、Sundayさんがキックボクシングをはじめて。ふたりでよく使うスタジオのロッカーに、だんだんSundayさんがミットとかグローブとかを……(笑)。
Sunday:音楽と関係ないものをアツムのロッカーに置き出すっていう。
アツム:スタジオでの作業が落ち着いたら、急にSundayさんが機材を片付け出してミット打ちをはじめたんですよ。あんまないじゃないですか? 音楽スタジオでミット打ちって。
Sunday:昨日もスタジオでちょっと練習してたんですよ。キックボクシングの試合があったんですけど、それに勝てたのは半分くらいアツムのおかげです。
アツム:僕は強くなりたいとか思わないですけど、勝手に反射神経が良くなった気がしますね。ホームで電車を待ってる時に、走ってくる人を見たらとっさに体が動きます。全然音楽的な話じゃないですけど……。
──突っ込もうかと思っていたので、気付いてもらえてよかったです(笑)。
アツム:新しいことをSundayさんから学ぶし、Sundayさんが新しいことを学んだ時には噛み砕いて僕に教えてくれる。キックボクシングもそうですし、音楽的なことも噛み砕いて教えてもらってますね。
Sunday:90年代のクラブの音楽についてとかね。
アツム:Sundayさんが若い頃の音楽はどういった仕組みで流行っていたのか、みたいな話をしてくれますね。そういうリアルタイムで体験できなかったことを「へ〜! そうなんですか!」って感じで、吸収してます。

──僕はSundayさんといろんな企画やインタビューでご一緒してますけど、いつも気さくで優しくて、ステージ上と変わらない印象なんですね。身近にいるアツムさんだからこそ知ってる、Sundayさんの意外な一面とか、そもそもどう映っているのか教えてもらえますか。
Sunday:なんでも暴露しちゃっていいよ。
──ちなみに、奇妙礼太郎さんは「Sundayさんはブッダかなと思う」とおっしゃってたんですよ。
Sunday:身が引き締まりますね、それは。
アツム:ブッダ……ブッダですか。
──俺は違いますけどね、の空気がすごい。
アツム:むちゃくちゃ優しいかと思えば、すごいチンピラみたいなこと言ったりもするし。「俺のものは俺のもの。お前のものは俺のもの」ぐらい横暴なことを言う時があります。
Sunday:それはあります。
アツム:僕がいままで出会った人のなかで、一緒にいてすごく勉強になる人であり、いちばん理不尽な人かもしれないです(笑)。ぶんぶん振り回される感じですね。
──アハハハ!
Sunday:いい意味でね。例えば僕がキックボクシングをはじめたら、アツムもキックボクシングをしないといけない、みたいな。そういう理不尽さはあります。
アツム:僕が「教えてください」と一言も言ってない状態から、半強制でレッスンが始まるんです(笑)。
Sunday:「絶対にできといた方がいいから」とか言ってね。他のメンバーの人たちは、僕に捕まらないようにすぐ逃げるんですけど、アツムは僕と同じ作業をするから逃げれないんです。そんな感じで、いい意味で理不尽よね。
──ワンダフルのステージを観ていても、たまにジャイアンみを感じる時はありますよ。それが許されるというか、周りもそれを楽しんでる。
Sunday:いやぁ、本当にいいバンドですね。
──逆に、Sundayさんから見たアツムさんの印象は?
Sunday:淡々と技術を培っている印象があります。トラックを作るとかミックスするとか、いろんなサンプリングの音を探したり加工したりって時間もかかるし、技術者の魂が入ってないと難しい作業で。お父さんが車の整備士さんで、いわゆる技術者なんで血を受け継いでるんやと思います。

──それこそ今回の新曲「spring summer set feat. AFRA」は、アツムさんのトラックにSundayさんがメロディと歌詞を重ねるという、はじめての試みをした楽曲だそうですね。
Sunday:補足すると、エレキコミックのやつい(いちろう)さんとやっているライトガールズとか、僕のお仕事のサウンドドプロデュースも全部アツムとやっていて。ワンダフルボーイズの曲に限って、僕以外が曲作りに関わるのは今作がはじめてですね。
──制作したのは2020年5月だそうですね。
Sunday:緊急事態宣言が発表されて、僕が主催している〈Love sofa〉の20周年イベントが中止になり、スタジオにこもっていたんです。で、ステイホーム中にアツムと「一服track」というトラックを公開する試みをはじめて「とにかく連続性を持たせるために、たくさん上げてくれ」と。そしたら「一服track」がめっちゃ良かったので「アツムのトラックがカッコいいから、一緒に曲でも作ろうか」という流れになったんです。ちょうど、その時に〈Love sofa〉のクラウドファンディングをスタートさせて。これからライヴはどうなるんだろ? イベントはどうしようか? という空気感で、この気持ちのまま曲を作ろうと思って。その時に考えてること、思ってることをアツムのトラックにメロディとラップを入れて作りました。
──楽曲を聴くと、〈Love sofa〉で手を挙げて楽しさを共有している演者とお客さんの画が浮かびますし、そうなってほしいという願いにも感じました。ただ、2020年に作った曲をリリースまで3年も温めていたのはどうしてですか?
Sunday: いちばんの理由は、2020年の春に思っていた「これから僕らはこうしていく」ということを、ワンダフルボーイズは3年間ずっとその歌詞の通りにやってこれた。だからこそいまかなって。
──3年前の歌詞を有言実行した曲なんですね。
Sunday:そうそう。書いてる時は、ここ3年に起こる最悪の事態を踏まえて、自分たちはどうするかを歌詞にしていて。それをやってこれたから、改めてリリースしてもいいだろうと思ったんですね。
アツム:最初にSundayさんとふたりだけで曲を作って、その後、ワンダフルボーイズの作品にしようとなって、レコーディングも自分たちでしてしまおうとなって。番長くんとふたりでスタジオに行ってドラムをRECして、ベースのニーハオは僕の家に来てRECして、自分らでイチからレコーディングしたんです。ワンダフルボーイズの作品のなかで、ミックスやマスタリングまで全部僕がやったのは、これがはじめてですね。
