2014/01/23 00:00

SAKEROCK オリジナル・アルバム・レビュー & 作品紹介

2000年、星野源が自分がプロデュースするバンドを作りたいと思い結成したバンド、SAKEROCK。エキゾチカの代表的なアーティスト、マーティン・デニーの楽曲から引用したバンド名が示すように、エキゾチックでどの音楽とも似つかない楽曲とユニークなライヴで、シーンの特別な存在になりました。インストゥルメンタル・ミュージックをBGMではなく、それ単体として力のあるものにすることを目指して活動してきた彼らの音源を振り返ることで、SAKEROCKというバンドの本質に迫りたいと思います。

自主制作による初CD『YUTA』(2003年3月8日)

※自主制作盤 : 2002年10月 / 全国流通盤 : 2003年3月8日 / リニューアル盤 : 2003年12月26日

SAKEROCKの記念すべきファースト・アルバムであり、初の全国流通盤。メンバー自身によって「1枚目というより0枚目」と位置づけられているとおり、何の気負いも衒いもなく、ただただ音楽という道具を使って遊んでいるような無邪気さがある。ここまで肩の力が抜けた処女作というのも珍しいが、それは結果として、近作まで一貫するSAKEROCKのポリシーになっているように思える。他のバンドと似てしまうのを避けるため、「自分たちが楽しくないことをする」をモットーに制作されたようだが、作品全体を満たすユーモア、どこかひねくれた印象は、このあたりに起因するものかもしれない。最後に、CDの帯に記されたキャッチが秀逸なので引用。「うっかり死んでしまっても、このCDがあれば大丈夫。あの世で楽しく踊れます」。たしかに、そんな能天気でお気楽な雰囲気が、このアルバムにはある。(text by 長島大輔)

ミニ・アルバム『慰安旅行』(2004年4月17日)

4人体制になったSAKEROCKがはじめてリリースしたミニ・アルバム。彼らがバンドを結成して最初に作ったと言われる「慰安旅行」は、現在でもライヴの際には必ずと言っていいほど演奏される定番曲となっている。「Green Land」、「テキカス!」、「Deep Liver」といったタイトルからもわかるように、全編にわたって旅の景色を思わせるナンバーが多いのが印象的。いま、あらためてこのミニ・アルバムを聴いてみても、この10年で彼らの音楽が多くの人の心の旅のBGMになったことを確信する。そればかりか、インスト・バンドなのにメロディーを口ずさめてしまう親しみやすさは、まさに旅をともにする"良き友"といったところ。ありきたりな表現だが、あえて言おう。彼らとともに音楽の旅に出てみるがよし!!(text by 松田里子)

1stアルバム『LIFE CYCLE』(2005年6月8日)

エキゾチカというにはあまりに溢れる生活感。ハマケンの暴走っぷりも含めて大正解。バンドの緊張感と身内のユルさ、若い疾走感もおっさんの哀愁も、思わずにやける良質のメロディが真剣にふざける強さを伴ってギュッと凝縮。高田漣やトオヤマタケオに加え、森山未來なんてタップで参加。バラエティ富み過ぎ。自然と身体も揺れる名曲も揃い、「信濃町」や「兵日記」のような優しい寂しさを感じる曲だってある。どうしようもなくくだらなくて、どうしようもなく愛おしい、そんな世界に僕らは生きていて、それはそれでよくわからないけれど泣けてきちゃうような。僕らが日々繰り返していく「生活」なんてそんなもんだろう。そんなもんだし、それほど素晴らしいもんだ。なんてことない日常にこそちっちゃいドラマが溢れていて、そこにはいつも人の数だけ「うた」がある。どんな歌謡曲よりも「うたって」いるインストバンドの記念すべき1stフル・アルバム。(text by 濱谷俊輔)

2ndアルバム『songs of instrumental』(2006年11月8日)

SAKEとROCK、我々が大好きなこの2ワードをバンド名にした男達がいる。『LIFE CYCLE』のおよそ1年後に彼らが世に出した『songs of instrumental』は、当時の表立ったライヴや舞台上における演奏活動でのそれを「裏切った」とも言える作品。星野源、田中馨のオリジナル楽曲の他に、半分近くはカヴァー曲で構成されている。アルゼンチンのユパンキ、ハナ肇とクレージーキャッツ「スーダラ節」、Nintendo 「MOTHER」等のカヴァー楽曲のテンポ、音数と楽器の多様さは、改めて聴いてみると驚くばかりだ。イントロダクションで、永積タカシ(ハナレグミ)が「分からないことに僕らはインストバンドさ」と唄う、恥じらい、そして謙遜とも問題提起ともとれるそれは、彼らの楽器と音楽への想いを愛しながら昇華していく態度そのもののようだ。SAKEROCKの”インストゥルメンタル”へのその問いに、歌い手が応えた名盤の誕生に、われわれは高らかに叫ぶ。SAKEROCKは、最高のインスト・バンドだと。(text by 松田里子)

3rdアルバム『ホニャララ』(2008年11月5日)

もともとインスト・バンドなのに、SAKEROCK初の完全インスト・アルバムとなった本作は、タイトル通りホニャララ~な感じの1枚。テキトーじゃないけどマジメでもない、無理やり型に押し込んでもうまくハマらない、まるでスライムのよう。で、どこがホニャララかというと、浜野のトロンボーンにミュートがかかっていることからどこかおちゃらけた緩い音になっているところ、そして星野によるマリンバがそれと程よく絡み合っているところ。本人たちはポップ・ソングを提示したアルバムに仕上げるつもりだったそうだが、いつの間にか日常描写に近い、生活に溶け込んだアルバムになっていたという。坂本龍一「千のナイフ」と、ゲーム「妖怪道中記」の世界が混ざり合った「千のナイフと妖怪道中記」という楽曲アイディアもおもしろい。表題曲「ホニャララ」はSAKEROCKを代表する名曲だと思う。入門盤としてもおすすめしたい1枚だ。(text by 梶原綾乃)

4thアルバム『MUDA』(2010年12月8日)

最新のオリジナル・アルバムは、無駄を極力排除したアルバムだから『MUDA』。ただでさえシンプルな彼らのサウンドに、無駄なんてものはあるのだろうか!? 1曲目「MUDA」の冒頭のドラミング、途中から音楽性がさらりと変化する「Green Mockus」など、見え隠れするソリッドなサウンドに彼らの剥き出しの本質を感じることができる。だから、私は『MUDA』というより『SHIN』(=芯)とあだ名をつけたいくらいだ。なんて冗談はさておき、ややリズム感あふれる前半に比べ後半は、『ホニャララ』から引き継いだちょうど良い余白感を大事にしながら、素直で音数少ないスロー・ナンバーを展開。「8.16」の泣きのトロンボーンには”おかえり~!”と手招きされているような、家庭的な暖かさと安心感を感じる。各々の活動で忙しい彼らだが、やっぱりSAKEROCKが帰る場所なのだろうし、そうであってほしい! 今後の作品にも期待したい。(text by 梶原綾乃)

シングル作品

左より、
『穴を掘る / 2、3人』(2005年1月11日)
『会社員と今の私』(2008年8月6日)

サウンドトラック他

上段左より、
『Penguin Pull Pale Piles Sound Tracks[BEST]』(2005年12月10日)
『キャッチボール屋』(2006年8月9日)
『トロピカル道中』(サケロックオールスターズ)(2006年8月9日)

下段左より、
『黄色い涙』(2007年4月4日)
『おじいさん先生』(2007年9月12日)
『ゆらめき』(2007年11月7日)

コンピレーション & トリビュート参加作品

上段左より、
コンピレーションCD『日本の態度』(2003年8月6日)
フィッシュマンズ・トリビュート・アルバム『SWEET DREAMS for fishmans』(2004年4月21日)
『細野晴臣トリビュートアルバム -Tribute to Haruomi Hosono』(サケロックオールスターズ+寺尾紗穂)(2007年4月25日)

下段左より、
オムニバス『極東最前線2』(2008年7月23日)
スクウェア・エニックス・トリビュート盤『More SQ』(2011年3月2日)
オムニバスCD『ニャンでもちゅうでもうたっちゃお~ニャンちゅうワールド放送局~』(2011年12月21日)

PROFILE

SAKEROCK

2000年に結成され、エキゾチックでどの音楽とも似つかない素晴らしい楽曲とユニークなライヴで一躍シーンの特別な存在として注目を浴びたSAKEROCK。メンバーは星野源、伊藤大地、浜野謙太。これまで4枚のオリジナル・アルバムとミニ・アルバム、オリジナル・サウンド・トラックなどを多数リリース。DVD作品は5枚を数え、映像作品の評価も非常に高い。FUJUROCKなど野外フェスなどにも多数出演している。近々のライヴではサポート・メンバーを6人加えた豪華セットによる豊穣なアレンジを披露。メンバーの星野源はソロでも俳優でも大活躍であるのはご存知の通り。伊藤大地も細野晴臣をはじめ多くのミュージシャンのサポート・ドラマーとして引く手数多。浜野謙太も在日ファンクや俳優としても活躍中。

>>SAKEROCK official web

この記事の筆者

[インタヴュー] SAKEROCK

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