INTERVIEW : 私立恵比寿中学(真山りか、安本彩花、桜井えま、仲村悠菜) × 杉山勝彦

私立恵比寿中学の15枚目のシングル「SCHOOL DAYS」。その歌い出しは、仲村悠菜のアカペラによる「愛される準備ができてる君に贈る歌」というフレーズだ。「愛される準備ができている君」とはいったいどういうことなのだろうか。そして、今作に散りばめられた「かくれんぼ」というモチーフは、なにを意図しているのか。今回の取材では、その答えが解き明かされる。ぜひこの記事で「SCHOOL DAYS」に込められた想いを感じて、さいたまスーパーアリーナで開催される〈私立恵比寿中学 15th Anniversary 大学芸会2025~LOVE&BRAVE~〉に向かってほしい。きっと大きな感動が胸を打つはずだ。
インタヴュー&文 : ニシダケン
写真 : つぼいひろこ
グループが経験してきた大変な出来事も踏まえて生まれたもの
──杉山勝彦さんは今回リリースされる私立恵比寿中学の最新シングル『SCHOOL DAYS』の表題曲の作詞・作曲・編曲を担当しています。杉山さんは2012年5月にリリースされたメジャー・ファースト・シングル“仮契約のシンデレラ”や、“踊るガリ勉中学生”、“禁断のカルマ”、“まっすぐ”、“全力☆ランナー”など数々のえびちゅうの曲を作っている、グループの歴史においても欠かせない人物だという印象があります。
杉山勝彦(以下、杉山):そうですね。えびちゅうには初期の頃から関わっていますけど、メンバーに会うことって、これまであんまりなかったんです。もちろんライブが終わった後に挨拶したりはするんですけど。今回はレコーディングもしっかりディレクションさせていただいたので、長い間話すことができました。仲村さん、桜井さんは、今回がはじめましてでしたし、新鮮な気持ちでした。

──桜井さん、仲村さんのおふたりは、杉山さんの印象はいかがでしたか?
桜井えま(以下、桜井):レコーディングのときにはじめましてだったんですけど、すごく優しかったです。「私たちの感情を優先に歌っていいよ」って言ってくださったり、安心して歌うことができました。
仲村悠菜(以下、仲村):杉山さんは数あるえびちゅうの中でも、いろんな振り幅がある楽曲を作ってくださっている方だなと思っていました。坂道グループの楽曲もたくさん作っていらっしゃる方なので、「あ、この曲って杉山さんが作っていた曲なんだ! 」と感じる曲もたくさんあったんです。だからレコーディングでは、すごい人に会える気持ちでした。
──杉山さんがえびちゅうのディレクションに入られるのは、今回がはじめてだったんですか?
杉山:そうですね。「ここは、こうやって歌いましょうか」みたいな歌のディレクションは今回がはじめてでした。実際やってみて、えびちゅうはすごく誠意に満ち溢れているグループだなと思いました。いちばんはじめの挨拶から丁寧だし、リップロールとかタングトリルやウォームアップもしっかりしていました。「なんていい子たちなんだろう」と思ったし、だからこそ「これは、がんばらないと」という気合いが入りましたね。


──真山さん、安本さんは今回のレコーディングはいかがでしたか?
安本彩花(以下、安本):歌詞の世界や私たちの気持ちに寄り添ってレコーディングを進めてくださるのが、えびちゅうに合っている感じがしました。実際に曲を作ってくださった方の想いを聞いたうえで私たちもそれを表現したいので、ニュアンスがわからない部分を直接伝えてもらえて嬉しかったです。
真山りか(以下、真山):ディレクションのやりかたって人によって変わるんですよ。最近のレコーディングって、大人数なのでさくっと終わることも多かったんです。でも今回は1000本ノックみたいな感じで、じっくりディレクションしてもらいました。
杉山:普通はここまでじっくりやらないんですよ。でも今回のシングルは節目の楽曲にもなるし、どう聴かせるかの方向性が大事だなと思ったので、「できれば僕も一緒にやらせてもらえますか? 」とお願いしたんです。特におふたり(真山・安本)の歌は初期からずっと聴いてきたし、いろんな歌い方ができる人たちだということは、わかっていました。実際いろんな歌い方ができるからこそ、今度の曲はどういう表現がいいのかを、一緒に考えて作りたかったんです。だから今回のレコーディングでは、アイドルというよりも、単体シンガーさんの歌を録るときのようなディレクションをしました。
えびちゅう一同:嬉しいです、ありがとうございます!


──歌詞にはどんな想いを込めたんですか?
杉山:この曲がリリースされる3月ってやっぱり「出会いと別れ」の季節だし、そんなときに「誰かの背中を押せる歌」というものを考えたんです。そこで浮かんできたのが、冒頭の「愛される準備ができてる君に贈る歌」というフレーズです。みんなで過ごしていた場所から、1人で巣立ち自分の道を歩いていく。だけどその先の道がズタズタでは、前に進めない。だからこそ、「自分の意思を貫けること」や、「人に干渉されずとも成立する強さ」を持つことが、愛されることにもつながるのではないかと考えて歌詞を描いていきました。
──タイトルの「SCHOOL DAYS」はどんなイメージで?
杉山:「SCHOOL DAYS」の「スクール」は、「私立恵比寿中学」をイメージしています。ファンの皆さんは、ある意味“えびちゅうスクール”の一員であり、さまざまな立場から時間を共に過ごしてきた“生徒”たちを見てきたと思うんです。だからこそ、この熱の伝え方を同じ気持ちで理解してくれるんじゃないかなと。
──なるほど。
杉山:ほかにもこの曲にはメンバーそれぞれの想いも込めました。たとえば、2番の「どうして君が? どうして僕が?そう泣き腫らした夜があった」という歌詞。ここには、グループが経験してきた大変な出来事も踏まえて生まれたものなんです。私立恵比寿中学は、これまで本当にいろんなことがあったグループだと思うんです。そうした歩みを隠すのではなく、その歴史の流れを受け止めた上で、今、このタイミングでえびちゅうが歌う『春に背中を押せる曲』として、言葉を紡いでいきました。

