1歩ずつ手ごたえを感じながら前に進んでいったほうが幸せ
──"そんな日々を生きていく"はおっしゃっていただいたような焼きそばさんの人生が表れた曲ではないでしょうか。ドラマチックな展開も、曲に込められた思いをダイレクトに伝えます。
焼きそば:サビと〈この声はきっと〉の部分が別々のデモとしてあって、無理やり1曲にしてみた結果こうなりました。個人的にはくっつけてよかったですね。素直に書けたなって感じする。〈1人じゃ寂しいからさ/手を繋いでおくれよ〉とか、いままでやったら書かれへんかったかもしれんし、メロディやバンドサウンド含め、からあげ弁当でいちばん好きな曲になりました。
──素直に書けた理由はなんでしょう?
焼きそば:周りを思う気持ちが増えたからかな。いつも関西で俺らを観てくれる人が「からあげ弁当の初フェスは、わたしらが見届けな誰が見届けんねん!」ってビバラに駆けつけて最前で観てくれたり。あの子らが思ってる以上に、俺らはほんまその心意気に助けられてるんです。会社もついてくれて、メンバーも頑張ってくれて、Ryu-no.もいままでの音源にリード・ギターをつけたデモを「こんな感じにつけてみました」ってしょっちゅう送ってくれるんですよ。そういうのに触れるなかで、素直になれてきたんかな。
──そういう背景もあってか、"そんな日々を生きていく"は自分自身に歌っているだけでなく、誰かに伝えたい思いがぎゅっと詰まっている印象がありました。
焼きそば:自分を鼓舞するような歌になったなと思うし、それが回り回ってお客さんに刺さればいいなと思ってるけど、確かにテンポが落ちるところはフロアに投げかけてますね。周りも巻き込むような歌というか。ここ2、3年は1回もセトリから外さんかなと思うくらい大事にしたい曲になったし、みんなにとっても大事な曲になってほしいですね。
──どの曲も焼きそばさんの人生が色濃く表れていますね。
焼きそば:ほんまっすね。"stay with me"も去年の12月ぐらいに彼女ができて、その子に宛てた歌を書きたかったんです。ゴリゴリの遠距離なのでそういう意味も乗せつつ。でもそれだけじゃないですよ? 応援してくれてる人たちへの気持ちも乗せてるんで!
──でもファンに向けた曲で〈君に会いたい君を愛したい〉はあんまりないかなと思います(笑)。
焼きそば:まあここは彼女への感情が6割占めてるかもしれん(笑)。でも応援してくれてる人の気持ちも乗せてるのはほんまっすよ! 実際からあげ弁当がはじまる前、俺が弾き語りをSNSで上げてる頃から聴いてくれてる北海道のファンの人とかおって、その人もずっと前からライヴに行きたいって言ってくれてるけど、やっぱ北海道から行くのは簡単ではないし、俺らもなかなか北海道に行ける機会がなくて。そういうもどかしさは、バンドやってても感じてるんですよね。

──からあげ弁当にはやりたいことが山盛りですね。今後さらに注目を集めるだけでなく、どんどん多彩な味わいになっていくだろうなと期待が高まります。
焼きそば:そうですね。いろんなジャンルの曲を聴くので、それが何年かしたら自分の作る曲に出てくるかもしれん。俺RADWIMPSもめっちゃ好きで。RADもジャンルめっちゃ広いじゃないですか。だからライヴも毎回新鮮で、通っていて飽きないんですよね。ああいうロックやけどロックの枠を飛び越えた感じは憧れるっすね。からあげ弁当も自分が納得できるロックをもっと土台として作らんと、ああいうふうにはなれへんやろなと思うし、『最高更新』はその第一歩となるEPになりましたね。
──歩みは一歩ずつ、見据える夢は大きく。
焼きそば:一気に飛び級するバンドではないですね。1段ずつ階段を昇っていくタイプやし、長く音楽を続けていきたい。そのためにはお金も稼がなあかんから売れていかなあかんし、でも売れるだけが音楽でもないし。そのふたつに板挟みになってる状態で、それがめっちゃ難しいけどめっちゃ楽しいですね。一気に運だけで売れるより、1歩ずつ手ごたえを感じながら前に進んでいったほうが俺的には幸せを感じられるんですよね。過程を楽しみたいタイプなので。
──自分の努力でひとつひとつを掴み取っていきたい。それは焼きそばさんが野球をやってきたから育まれた感性かもしれませんね。
焼きそば:そうかもしれないですね。いい曲出して、いいライヴするしかないなと思ってます。DTMできなくて曲作りはアナログやけど、SNSもちょこちょこ使って社会に置いてかれないようにしながら(笑)、いい曲出して、いいライヴをするに尽きるんちゃうかなと思ってます。そのためにもこれからも楽しみを作っていかなあかんすね。日常に慣れたくない。そういう意味ではほんまにこのタイミングでビバラに出られてよかったなと思うんです。ほんまにフェスに興味なかったのに(笑)。
──(笑)。実際に体感してわかること、たくさんありますから。
焼きそば:はじめてやってみて野外のフェスの雰囲気を知ったから、次はこんなふうにしてみたいなというイメージも湧いたぶんほんままた出たいなと思ったし、これが毎年の楽しみになるなんてめっちゃいいっすよね。そういう楽しみをどんどん増やしていって、幸せな音楽人生にしたいです。

