死なないでね、という呼びかけではなく、死を想う大切さを歌ったものが多かった
──今作は「メメント・モリ」(死を想う)というタイトルですが、そういった意識を持った上で制作されましたか?
近藤:この「メメント・モリ」というタイトルを付けたのは全曲出揃った後だったので、制作時に意図していた訳ではないです。前作『moment』は出会いや喜びといったイメージが強かったのですが、今作はその真逆に近い楽曲ばかりが(自然と)生まれてきたんですよね。死なないでね、という呼びかけではなく、死を想う大切さを歌ったものが多かったので、このタイトルにしました。
──前作『moment』は“逢いの唄“ではじまって“またね、“で終わり、今作もまた、死を想いつつも、そこから生を促す内容になっているなと思っていて。そういった対比や、二項関係を音楽表現するというのは、mollyらしさになりつつあるという自覚はありますか?
近藤:意識はしてはいませんが、好みが表れているというか、癖になっているのかもしれないです。“アウトサイダー“も、1番は昼、2番は夜を描写していますし。サウンド面に関しても、がっつり暗い歌詞を、すごくポップな曲調に仕立て上げるのがすごく好きなんですよ。なので、そうした意識の表れかもしれないです。とはいえ、ポップな歌詞は全然書けないんですけどね。書きたいなとは思って頑張っていますけど、全然できなくて。それもあって、今作は「死を想う」がテーマになりました。
──でも、そういった二面性があるからこそ、聴き手の想像力を掻き立てると思います。ファンタジーとリアルが絡み合った歌詞世界も、今作の特徴のひとつではあると思いますし。
近藤:今作についてメンバーと話し合った時に出てきた指標が、「前進するアルバムにしよう」だったんです。なので、先ほどお伝えしたような自分の好みを前面に出した歌詞を、どうやって進歩させようか?と考えた末に行き着いたのが、“物語風にする“という挑戦でした。なので、“アウトサイダー“や”夜汽車に乗って“については、物語と現実をリンクさせつつ、歌詞を展開していくように仕上げていきました。
──“朧月“も、そうした意識の上で作られたんですか?
近藤:この曲は、僕がはじめて作った曲なので、めちゃくちゃ昔からある曲なんです。
──え、こんなに良い曲をよくここまで温め続けていましたね……! でも、この曲をメロコアスタイルに仕上げるのは厳しいか(笑)。
近藤:そうなんですよ! でも、この曲をめちゃくちゃ速くやってみようと試みたことはあります(笑)。 全然ダメでしたけど(笑)。
──そうでしょうね(笑)。だけど、最初に作った楽曲を鳴らせる体制に自然と変遷していったというのは、なんだかドラマチックですね。巡り合わせといいますか。
近藤:ああ、確かにそうですね。でも、この曲をやるかどうかはギリギリまで悩んでいました。メンバーがすごく推してくれたから採用したんですけど、自分では、どこが良いのかが全然分からなくて。メンバーにも「どこが良いと思っているの?」と何度もきいて、気遣って言ってくれているのかな?と不安でした。
──私からも言いたいですが、良い曲ですよ! この“朧月“に関しては、当初弾き語りだったということもあって、アレンジもかなり変わってそうですね。
近藤:全く違いますね。しかも、勉強しながらアレンジをしていった楽曲なので、他の曲と比べると全く違う方法を取ったということもあり、いまだにスタジオで合わせる時に苦戦しています。でも、とても歌いやすいですし、ライヴで上手く届けられる自信はあるので、早くライヴで歌ってみたいです。
──アレンジの方法を変えたということは、メンバー同士のやり取りもいままで以上に密だったんでしょうか?
近藤:そうですね。いままではそういうやり取りをあまりしてこなかったのですが、この歌詞だからこのビートでやっているよ、とか、こういう歌詞だからこのフレーズを入れたよ、とか、今回はそういう答え合わせをするようになりました。結構ちゃんと聴いてくれているんだな、と嬉しくなりましたし、新鮮でしたね。
