羽根田くんがありのままの姿でいられないまま一緒にやるのも違う
──2020年に活動を再開して、去年の12月に3年ぶりの新曲“bbb / 夢で逢えたら”と“ダーリン / TOKKO”を配信、そしてファースト・アルバムが完成。結果的に置きみやげになってしまったわけですが、羽根田さんから「やめたい」という話があったのは?
岩崎 : 去年の10月だったと思います。「バンドをやりながらだと叶えられない夢がある」みたいに話してくれて、最初は「えー、やめないでよ」って言ってたんですけど、意志が固かったので僕も受け入れて、だったら最後までお客さんと一緒に楽しんで解散できたらいいなって思って、こういう流れになりました。
──活休の間も待っていてくれた高校時代からの友達が「やめる」って言うのは、そうとう考えて悩んで、覚悟を決めた上でのことでしょうからね。
岩崎 : 本当ですね。僕がもし強く引き止めて仕方なく残ってくれたとしても、羽根田くんがありのままの姿でいられないまま一緒にやるのも違うなと思ったんで、受け入れました。ここで1回やめにしたほうが、またベース弾きたいときに戻ってきてくれるかな、一緒にやってくれるかな、みたいな……そういう気持ちもあって。
──スタッフの方たちはどうでしたか?
岩崎 : みなさん受け入れてくださいました。「ここで終わりなら最後まで一緒に楽しもう」って言ってくれたので、本気で楽しみながら過ごすことができて、よかったです。
──バンドを残してメンバーを替えるんじゃなくて、「羽根田がいないならSUNNY CAR WASHじゃない」という考え方なんですね。
岩崎 : そうです。僕が自分の思い通りにしていたというよりは、羽根田とも、ウネや菜帆ちゃんやたかひろさんとも、お互いに影響を与え合っていたので。そうして曲ができてライヴの雰囲気ができていく、それがお客さんに伝わる、というのがバンドだと思うんです。メンバーが僕だけになるならソロをやろう、SUNNY CAR WASHじゃないなにかをはじめよう、と気持ちを切り替えました。
──じゃあ曲も、クレジットは「作詞・作曲:岩崎優也」だけれど……。
岩崎 : みんなで作った感じがします。歌詞とメロディは僕が作ってますけど、出てくる言葉とかも、もしかしたらメンバーとかお客さんとかスタッフさんの雰囲気がなかったら出てこなかったものかもしれないですし。そうしていろんな人と音楽を通してコミュニケーションできてることがうれしいんです。
──コミュニケーションというのは納得がいきます。僕は友達に呼びかけた“キルミー”がいちばん好きなんですが、この曲をはじめ、アルバムを聴いても他者との関係から生まれた曲がほとんどだなと思ったので。
岩崎 : たぶんそうだと思います。あんまり意識せずにそのとき出た言葉でありメロディなんですけど。
──“放課後”も、なにも持っていない若者のラヴ・ソングって感じでいいですね。
岩崎 : ありがとうございます(照笑)。自分でもライヴで久しぶりに歌うと当時のことを思い出して、こういう気持ち忘れたくないな、みたいに思います。
──成熟とともに変わっていきますからね、よくも悪くも。
岩崎 : この5、6年で自分もちょっと変わったなって思いながら、何年か前の曲をライヴでやって、その気持ちを思い出すこともあって。「あ、思い出してるんだ、自分」みたいな。お客さんも、高校生だった人が大学生とか社会人になってて、一緒に歳をとってる感じがするのが楽しいですね。これからも若い気持ちを持ったまま生きていきたいですけど。
──ベスト・アルバム的な趣もあって、岩崎さんと羽根田さんにとってもっとも愛情のある14曲ということですね。
岩崎 : そうです。羽根田と話し合って、ひとつひとつの曲について作ったときの気持ちを思い出しながら選んで、並び順も何回も聴きながらふたりで話して決めていきました。“ムーンスキップ” “キルミー” “それだけ”のラスト3曲にはふたりでこだわって。
──20歳前後のころに作った曲が多いですか?
岩崎 : そうですね。“bbb”とか“ダーリン”とかは最近ですけど。
──そう聞くとその2曲は表現が洗練されてすっきりしている気がしますね。
岩崎 : たしかにそんな感じがします。整った感じというか。
──曲作りでこだわっているのはどんなことですか?
岩崎 : なるべくシンプルに作りたいんですよね。シンプルだけど、聴いてて感じるものがある曲が好きなんで。そういう風にできると「やった!」って思います。簡単な言葉が使われてて。
──僕は文章を書いていて、読んだ人が知らず知らずのうちに感化されるというか、自分がそう思っていたと信じ込んでしまうようなものを書けたら理想だなと思うんですが、そんな感じですかね?
岩崎 : あー、わかります。どこかで読んだり誰かに聞いたことを、あたかも最初から自分がそう思っていたかのように誰かに話しちゃったりすることって、僕もあるので。影響を受けやすい人あるあるですね(笑)。そういう曲を作れたら最高です。
──本当にそうですね。いまのところそこまでの曲は作れていない?
岩崎 : まだ作れてないんじゃないですかね。いっぱい作っていきます、これからも。
