人生をここにギュッて込めたような歌詞になった

──今回の『Flavor』全体のコンセプトはどのようなところから?
石渡真修:アルバムを聴いた時に全く違うテイストの6曲が並べばおもしろいかなと思っていました。役者だからこそ色々な歌い方、表現の仕方ができるよっていうのを詰め込むことが今回のテーマになっています。
──アルバム自体はどのくらいの時期から、制作されたんでしょう?
石渡真修:去年2021年の4月くらいからですね。舞台を挟みながらだったので、前半と後半に分けてレコーディングをしました。後半になっていくとレコーディングにも慣れてきました。前半に録った“ZERO”、“my STORY”、“Flavor”は、すごくウブな感じが曲に出てるので、もう1回録りたい気持ちはありますね(笑)。
──前半と後半で成長が見られるのも聴きどころですね。
石渡真修:そうですね。だんだん「こういうふうにしてったらいいんだ」とか、表現の仕方や息の抜き方もだんだんわかってきました。いままで舞台で歌うことがあっても、グループで歌うことが多くて、全部自分で歌うわけではなかった。でも今回は全部自分で歌わないといけない。だから、ボイトレも本気でやりました。色々な歌を聞いて、色々なアーティストさんがどういう表現をしているんだろうとか、そういう部分も気にしていきました。
──1曲目の“ZERO”は、自分の殻を破るような、疾走感のあるロックな曲調です。
石渡真修:これは聞いてくださっている方が頑張れない時、やる気を出したい時に聞いてほしい歌ですね。優しさと背中を押す感じ、強さと優しさの両方が伝わればいいなという感じで歌わせていただきました。またゼロからはじめよう、ここからもう一歩踏み出そうっていう曲になっているので、それが伝わればいいなと思っています。
──リード曲 “Flavor”は結構変則的で、歌うときもかなり難易度が高い楽曲ですよね。
石渡真修:正直いちばん歌っていて難しいです。変調したり、変則的じゃないですか。でも、だからこそリード曲にしたかった。いちばん難しい曲に挑戦して、自分の殻を破るという意味でもこの曲がいいなと思っています。矛盾をテーマにしている曲なので、結構これから自分の経験によって歌い方が変わる歌だなと思います。
──この曲はこれからライヴなどで歌っていくうちに、どんどん変化していきそうです。
石渡真修:これをしっかり歌い上げられるようになったらアーティストとしてもひとつ上のステージに上がれるのかなと思います。これからは、ライヴもどんどんやりたいですね。一回バースデイイベントで“Flavor”と“my STORY”と“夢でまた逢いましょう”を歌わせていただいたんですけど、やっぱり難しいですね。
──3曲目に収録されている“my STORY”はご自身での作詞です。まさに石渡さん自身のストーリーのような歌詞です。
石渡真修:まるまる実話ですね。本当に自分の俳優としての人生のはじまりの方を思い出して印象に残ったことを歌詞にしました。人生をここにギュッて込めたような歌詞になりましたね。歌詞って自分の気持ちがバレちゃうから恥ずかしいですね(笑)。
──実際、作詞してみていかがでしたか?
石渡真修:最初はちょっと悩んでたんですよ。でも、スタッフの皆さんと話し合って10周年の曲にしようってなってからは悩まなかったです。悩んでた時期は、自分のメモ帳に歌詞にしたい言葉を並べていたんですよ。カッコつけて、おしゃれな感じで比喩も使っていたんですけど、これはそのなかの1文字も使ってないです。全部結局自分で浮かんできた言葉をまんまここにぶつけました。
──「ラケット強く握りしめた 震えが止まらなかった 目の前で揺れる shining star」の部分は、ミュージカル『テニスの王子様』に出演していたことを表現されたんでしょうか。
石渡真修:そうですね。どうしてもこの歌詞の中に自分の具体的なものを入れたくて。悩んだんですよね。でも、ミュージカル『テニスの王子様』は自分の芸能生活のなかでいちばん印象に残っていたので、そこは避けられないなと。『テニスの王子様』で初めて舞台上にあがった時、本当にたくさんのお客さんがペンライトを持っていたんですよ。そのなかに芸能3ヶ月目くらいの自分が飛び込んでいってこれからパフォーマンスをしなければいけない。そのときの緊張を表現しました。
──『テニスの王子様』のご自身のなかでも大きい舞台だったんですね。
石渡真修:僕が演じた桃城武役って主役校青学のメンバーなんですよ。だから、とにかくプレッシャーもすごかったです。経験より先に色々なものが自分にのし掛かってきて、最初は苦しかったです。それまでも舞台は出ていたんですけど、『テニスの王子様』は、完全にエンタメだったので全然感覚も違って、「こんな世界があるんだ」って感動しましたね。
──4曲目の“パラレル”は、これまでの3曲とイメージがガラッと変わった曲です。
石渡真修:これはYOASOBIさんの“夜に駆ける”をイメージしました。“Flavor”と同じくらい難しい曲でしたね。自分は感情を入れて表現することが多いんですけど、この曲は淡々とテンポ通りに歌うことが大事なんですよ。レコーディングのときは苦手で何回もリテイクしました。でも、出来上がり聴いたら、「めっちゃ良い歌じゃん」って思いました。
──この曲はどの部分が難しかったんでしょう。
石渡真修:感情は入っているんだけど、淡々と音程とリズムは絶対に崩さずていうのが難しくて。でも、歌をやることで、芝居の幅も広がるし、これも演技の勉強になるなと思いました。聞く人によって色が変わるのが“パラレル”という曲だと思うので、たくさん聞いていろんな意味を感じてほしいです。
──次の“嘘”は、すごく優しい曲ですね。
石渡真修:この間母親から、このアルバム全曲の感想が送られてきたんですよ。そのなかでも「“嘘”がいちばん好きだ」と言っていて。理由を聞いたら、「自分の息子には、こういう人になってほしいって。そばにいるけど、別に深く聞こうとしないし、ただ居てあげるよっていう人になって欲しいから、私はこの曲が好き」って(笑)。母激推し歌です(笑)。
──(笑)。確かにこの曲は、すごく優しさが伝わる曲だなと思います。
石渡真修:相手のことを全部は知らないけど、それでも良いから俺は隣にいるよって寄り添っている歌だと思うんです。でも、切なさも入っています。この曲もいろんな受け取り方ができる曲ですね。