
カナダはトロント発のインディー・レーベル、Arts & Crafts。アート性の高いアーティストを数多く世に送り出し、近年のカナダ・ロックの人気を支える存在だ。そんなArts & Craftsが、レーベル設立10周年を記念してコンピレーション・アルバムをリリース! 34曲入りのヴォリュームで1800円というお手軽価格なため、ここ10年のインディー・ロックを振り返るもよし、これを機にカナダ・ロックの世界に足を踏み入れるもよし。是非ともあなたに合った楽しみ方をしていただきたい。
Arts & Crafts : 2003-2013 / V.A.
【配信価格】
WAV 単曲 200円 / アルバム購入 1800円
mp3 単曲 200円 / アルバム購入 1800円
※一部の楽曲はアルバム購入のみの配信となります
【Track List】
01. 7/4 (Shoreline) (Broken Social Scene)
02. Elevator Love Letter (Stars)
03. Are You Gonna' Waste My Time? (Zeus)
04. Being Here (The Stills)
05. Mushaboom (Feist)
06. Folkloric Feel (Apostle Of Hustle)
07. Skinny Boy (Amy Millan)
08. Content Was Always My Favorite Colour (The Most Serene Republic)
09. I'll Bring The Sun (Jason Collett)
10. Recovery (New Buffalo)
11. I Feel It All (Feist)
12. Demon Host (Timber Timbre)
13. Rows Of Houses (Dan Mangan)
14. Your Ex-Lover Is Dead (Stars)
15. You! Me! Dancing! (Los Campesinos! )
16. Lover's Spit (Broken Social Scene)
17. Deathcock (Broken Social Scene)
18. Mind, Matter and Waste (The Hidden Cameras)
19. She Got By (Amy Millan)
20. I Want a New Drug (Apostle Of Hustle)
21. Grave Goods (Cold Specks)
22. Saccharin and the War (Ra Ra Riot)
23. You Don't Know Me Anymore (Sally Seltmann)
24. Allez Les Blues (Los Campesinos! )
25. The Darkness of Things (Timber Timbre & Tasseomancy)
26. Islands In The Stream (Feist & Constantines)
27. Rollerskate (Stars)
28. Raise the Dead (The Dears)
29. Secretaries' Party (Brendan Canning)
30. False Cassandra (Jason Collett)
31. Faults (Dan Mangan)
32. Tarantelle (Chilly Gonzales)
33. Apology (Kevin Drew)
34. Blue Moon (Snowblink)
2000年代のインディー・シーンを総括したかのような内容

カナダのインディー・ロック。それは近年のシーンを語る上で、もはや外せないものとなっている。アメリカとイギリスを中心に広まっていったインディー・ロックは、ここ数年もアメリカのブルックリン(MGMT、ヴァンパイア・ウィークエンド、ダーティー・プロジェクターズ、ザ・ドラムス等)やイギリスのマンチェスター(ハーツ、エブリシング・エブリシング、デルフィック、エジプシャン・ヒップホップ等)のインディー・シーンが賑わっているが、近年はその他の様々な国でも良質なアーティストが登場している。ノルウェーのチーム・ミーやアイスランドのオブ・モンスターズ・アンド・メンといった北欧インディー・ロックも注目されたが、やはり一番の注目はカナダのインディー・シーンだろう。
2000年代のカナダはアメリカ、イギリスと並ぶインディー・ロックの才能の倉庫だ。その層の厚さと多様な音楽性は世界のインディー・シーンのメインストリームと言っても過言ではない。そのカナダのインディー・ロック・シーンを支える存在が、カナダはトロントを拠点とするインディペンデント・レーベル、Arts & Craftsである。CDをレーベル買いする人もいるくらい、良質なアーティストばかり輩出し、インディ・ロック・ファンから大きな注目を得ている。今作のレーベル設立10周年記念のコンピレーションは、まさに2000年代のインディー・シーンを、総括したかのような内容と言えよう。所属アーティストのヒット曲や、未発表音源も多数収録されており、レーベルのファンはもちろん、知らない人にとってもすばらしいコンピレーション・アルバムとなっている。
ここで一部ではあるが、筆者の個人的なオススメをご紹介したい。まずはなんと言っても、レーベル設立者のケヴィン・ドリュー率いる、カナダのインディー界最重要バンド、ブロークン・ソーシャル・シーン。彼らの音楽は多様な楽器を駆使し、濃密で芸術性が高い。いわゆるアート・ロックと呼ばれるものだ。アメリカ的でも、イギリス的でもない彼らの音楽は、まさにカナダの音楽そのものと言える。
続いてレーベルの看板バンドであるスターズ。ニューウェイヴの影響を受けたドラマティックでドリーミーなポップ・サウンドとヴォーカルのエイミー・ミランの甘美な歌声は心地よく、カナダの幻想的な銀世界を垣間見れる。ちなみにエイミー・ミランはソロとしてもこのコンピレーションに参加しているので、そちらも要チェック。
続いて昨年、カナダでその年、最も優れたアルバムに送られるポラリス賞を受賞し、いまや世界的な知名度を得たファイスト。ハスキーな歌声と多彩な音楽性はジョニ・ミッチェルを彷彿とさせるが、彼女の音楽はジョニ・ミッチェルより色味や温もりが感じられる。クールだが優しさに溢れ、耳にそっと入ってくる少しくすんだ歌と、決してカラフルなわけではないが、弦楽器やホーンのアレンジで淡く色づけられた、暖かみのある音楽はまさに極上の安らぎだ。
最後に紹介するのはダンサンブルなインディー・ギター・ロックを鳴らす7人組、ロス・キャンペシーノス! 開放感、キラキラ感、弾けっぷりはこれぞまさにインディー・ロック。明るいサウンドに対して、自分の感情をぶちまけたネガティヴな歌詞の世界、若さゆえのこの衝動感がたまらないのだ。王道インディー・ギター・ロックのど真ん中を行く彼らに是非注目してほしい。
紹介したアーティスト以外すばらしいアーティストばかりなので、是非チェックして、お気に入りのアーティストを見つけてもらいたい。10周年を迎えた、インディ・ロックの重要レーベルArts & Crafts、これからもどんなアーティストが出てくるか楽しみで仕方がない。次なる10年も、Arts & Craftsから目が離せない。(text by 吉野敬一郎)
参加アーティストの音源はこちら
Arts&Crafts PROFILE

2002年、ジェフリー・レメディオス(Jeffrey Remedios)とブロークン・ソーシャル・シーンのケヴィン・ドリュー(Kevin Drew)によって設立された。最初はブロークン・ソーシャル・シーン関連のリリースに専念していたが、徐々に他のアーティストを世に送り出すようになる。インディーレーベルではあるが音楽賞に名を連ねるようなアーティストを輩出しており、カナダの音楽業界において重要なレーベルのひとつとなっている。2008年、Arts & Crafts Mexicoを立ち上げた。