OTOTOY EDITOR'S CHOICE Vol.326 変わっても
OTOTOY編集者の週替わりプレイリスト&コラム(毎週金曜日更新)
変わっても
ヨルシカを信じすぎている自覚がある。新譜「火星人」も、最初は意図のわからない「休符。」という歌詞とブレイクに混乱して、微妙かもしれない…。と思っていたところ、MVが公開され、こちらを見透かしているかのような歌詞に合わせて踊るタコを見て、しっかりと心を掴まれてしまった。最近はずっとそうで、一聴してもよくわからない曲が多い。“へび” だって、最初は地味な曲だなあと思っていたけど、アレンジもメロも良くてずっと口ずさんでしまう…。J-POPの中でも間違いなく高い評価を受けていて、クオリティが安定しているのは事実だけど、攻めた曲が多い中でこんなにも心酔してしまっているのは、自分でも不気味な気持ちになる。
最近、カネコアヤノが「kanekoayano」名義でアルバム『石の糸』をリリースした。フォークらしさが薄まり、ファズ・ギターが鳴っていて、これまでのファンも少し混乱していたように見えた。そうだよなと思いつつ、自分はすごく気に入ったし、たくさん批評を探して、たくさん聴いた。賛否ある中で、知人のカネコアヤノファンは「彼女が発信しているものは全てありがたい!」と言い切っていて、その潔さに驚いた。クリーンに音楽だけを享受することが正義ではないんだ、という気づきが、自分の中ではとても大きかった。バンドのメンバーが変わったらきちんと雰囲気が変わるものだと思っているし、バンドのメンバーがソロ・プロジェクトを始めたら、その人の面白さを純粋に観測するチャンスだと思っているので、自分が最近のヨルシカを好きなのがとても腑に落ちた。信じすぎている、ということはないんだなと。
形態が変わっても、ジャンルが変わっても、同じ人が作っていれば地続きだということ。好きで当たり前だということ。そこが音楽の面白さであるということ。胸に刻みたい、というプレイリストです。
