3776が初のバンドセットで描ききった「宇宙の誕生から消滅まで」──伝説級のライヴ音源、ハイレゾ配信スタート!!

富士山ご当地アイドル、3776(みななろ)が2025年4月10日(木)に東京・渋谷WWWにて、ワンマン・ライヴ〈The Birth and Death of the Universe through Mount Fuji -Band Set Live Version-〉のライヴ音源が配信スタート!!初のバンドセット・アレンジで描かれた3776の世界とは、いったいどのようなものだったのか。ライター・南波一海による渾身のライヴレポートと共にお楽しみください。
3776〈The Birth and Death of the Universe through Mount Fuji -Band Set Live Version-〉ライヴアルバム、配信スタート!
3776初のバンドセット・ワンマンの模様を完全収録
2025年4月10日(木)に開催された、3776初のバンドセットでのワンマンライヴ〈The Birth and Death of the Universe through Mount Fuji -Band Set Live Version-〉の音源を完全収録。「宇宙の始まりから、終わりまで」と「高校入学から卒業まで」の軸が絡み合う、前代未聞のコンセプトを持つアルバム『The Birth and Death of the Universe through Mount Fuji』を生バンドでどのように表現したのか。ぜひともハイレゾ音源で隅から隅まで味わってください。
Vocal:井出ちよの
Guitar:石田彰
Guitar、synthesizer:キャプテンミライ
Drums:鈴木邦明
Keyboard:岡田ぴサス
Bass :岡田典之
サウンドプロデュース : 齊藤州一
録音&ミックス&マスタリング:高橋健太郎
録音:高木理太、菅家拓真
撮影:大橋祐希
ブックレットデザイン:ナガタミキ
制作:飯田仁一郎 、西田健
【アルバム購入特典】
ライヴ写真を使用したデジタル・ブックレット(PDF)
LIVEREPORT : 〈The Birth and Death of the Universe through Mount Fuji -Band Set Live Version-〉
取材&文 : 南波 一海
写真 : 大橋 祐希

その日、その場にいた人々はみな思ったはずだ。 私たちは宇宙の誕生から消滅までをたしかに目撃した、と。
去る2025年4月10日、渋谷WWWにて富士山ご当地アイドル3776のワンマンライブ〈The Birth and Death of the Universe through Mount Fuji -Band Set Live Version-〉が開催された。
“富士山という山がどこにあるか知ってますか?
そう、この、宇宙にあります。
この宇宙の中でどのように生まれ、そしてその全ては、どのように消えていったのでしょう。”
という問いかけに始まり、気の遠くなるほどの壮大なスケールで宇宙史、地球史、富士山の歴史を描いてみせたアルバム『The Birth and Death of the Universe through Mount Fuji』。


タイトルの通り、宇宙の始まりから終わりまでの時間の経過をカウントしながら、ビッグバン、原始惑星の誕生、地殻変動、富士山のもととなる先小御岳火山の噴火といった歴史的事象をナレートしつつ、同時に各楽曲のなかで繰り広げられる高校生の学生生活を重ね合わせてみせたという奇異なる作品で(詳しくはインタビューを参照されたい)、その前代未聞で奇想天外な発想は聴く者を驚かせ、困惑させもした。ちなみに時間のカウント、ナレーション、歌というすべての声の要素はおなじみ、井出ちよのひとりが担っている。
3776はこれまで、1秒=1メートルとして富士山の標高3776メートルを3776秒かけて登っていく『3776を聴かない理由があるとすれば』、1秒=2時間とみなして富士山にまつわる1年間366日の出来事を73分12秒で綴る『歳時記』といったコンセプチュアルなアルバムを発表してきており、そのアルバムをテーマにしたライブも行なってきた。今回もその例にならった、いわゆるレコ発記念公演ということになる。


驚異と狂気に満ちたアルバムの再現公演であり、しかも3776史上初めてバンドセットでのライブということで、期待に胸を膨らませるファンも多かったことだろう。3776は過去幾度となく、ほかでは体験できないライブを見せてきてくれたからだ。また、3776のワンマン公演自体も久々ということもあり、会場には多くの観客が集まった。
Riow Araiによる3776ゆかりの音源縛りのオープニングDJのあと、バンドの面々がステージに登場。メンバーは3776のプロデューサーの石田彰(Gt)、キャプテンミライ(Gt、Synth)、鈴木邦明(Dr)、岡田ぴサス(Key)、岡田典之(Bass)の5名。それぞれが所定の場所に着くと、ポーズを取ったまま微動だにせず静止している。3776のワンマンは演劇的要素が強いのも特徴で、今回は控えめながらバンドメンバーたちにもシンプルな演出がなされていた。


無を表現した「Introduction」の持続音が鳴ると主役の井出ちよのが登場。アルバムと同じナレーションを入れるとともに本編がスタートした。
ステージ背面のスクリーンには数字がカウントされており、アト秒、フェムト秒、ピコ秒、ナノ秒……と、どんどん単位が変わっていく。『The Birth and Death of the Universe through Mount Fuji』は先述のとおり、アルバムのなかで常に年数が読み上げられているのだが、石田は作品の制作にあたって、まずはDTMソフトのアレンジ画面に年表を作るところから始めたという。その時間軸に沿うように各楽曲が作られていったわけだが、今回、スクリーンに数字が映し出されることにより時間の経過するさまが可視化され、アルバムの構造やコンセプトがぐっとわかりやすくなったのではないだろうか。映像演出としてはシンプル極まりないが、これ以上ないほどの大きな効果をもたらす表現であろう。


さておき本編である。音源と同じように演奏する部分も、当然のように変化している部分もおもしろい。一曲目の「The Birth of the Universe (主役は私だもん!)」から、打ち込みでしかありえないようなベースラインやドラムパターンがバンドのダイナミックかつパワフルな生演奏に置き換わっている。そのこと自体に新鮮な驚きと喜びを感じたし、百戦錬磨の井出にも適度な緊張感があり、歌にもダンスにも迫力が増していたように思う。
中心で歌い踊る井出以外にも見どころが多く、あちこちに目がいってしまうが、なかでも目を引いたのは石田の演奏だ。曲が終わると袖に行くので様子を見ていると、ギターを持ち換えて戻ってくる。楽曲によってエレキ、アコースティック、エレアコ、ガットと音源さながらにギターを使い分けているのだ。石田は時に柔らかい音を奏で、時に電動ドリルまで使用してノイズを作り出す。「The Birth of Life on Earth(貧乏ゆすりに誘われて)」の轟音はドリルで鳴らされている! これはライブ音源でもぜひ確認してほしい。



身体的に躍動するバンド演奏の興奮を経て、本編は富士山の誕生と高校生の青春の絶頂期を重ね合わせた「Mount Fuji (17歳はパーフェクトエイジ)」から、あっという間に現代を通り越し、やがていろいろなものが消滅しゆく後半の「The Death of ~」パートに突入。富士山は崩壊し、日本列島はユーラシア大陸とくっつき、やがて太陽は膨張して地球が飲み込まれる、という時間軸とともに高校生の学生生活も次第に終わりへと向かっていく……と真面目に書いていて、3776はほんとうにワンアンドオンリーな作品を送り出したものだと感じ入る次第。ライブは盛り上がりを増し、歌も演奏もどんどんアッパーになっていく。
ハイライトは「The Death of the Atom (さよなら渦巻きの中の私)」。原子の消滅と高校卒業と重ね合わせた楽曲で、エモーショナルで美しいメロディ、どこか可笑しくも寂しく切ない歌詞、ポップス然とした整った構成の、3776がここぞというときに持ってくるタイプの名曲である。演奏陣の熱さと井出ののびやかな歌声も素晴らしい。


その日一番の盛り上がりを見せたあとは、飲み込むものがすっかりなくなったブラックホールの蒸発と高校卒業の喪失および自由を重ねてみせた「The Death of the Universe (卒業したはずの君に)」。止まっては進む展開が繰り返し訪れる楽曲で、静寂とリンクするように幾度となく手をひらいては閉じる井出のダンスとともに長大な物語は閉じられていく。音声と映像でカウントされていた数字は途轍もない桁に到達しており、スクリーンには1000穰無量大数年という、まるでイメージのできない言葉が映し出されている。 呆気にとられていると、いつしかバンドメンバーは冒頭と同じポーズの状態で固まっており、「Introduction」で聴いたあの持続音が流れるなか、ひとり自由に動き回れる井出がこう言い残してステージを去っていくのだった。
“事実上の時間の終わりです。富士山が存在していた宇宙は、時間もない凍った無の世界になりました。 さーて。私はまた別の宇宙で別の富士山を探そうかな。 あ、みなさんがいる宇宙はまだまだこれからも続いていくはずなので ぜひ、心ゆくまで楽しんでね。バイバイ!”


アルバムとまったく同じ台詞ではあるのだが、ライブを通してこの物語を体験すると、この言葉にはえも言われぬ感動が乗っかってくる。そして冒頭に記したことを強く確信するのだ。 私たちは宇宙の誕生から消滅までをたしかに目撃した、と。 本編が終了すると会場は拍手喝采。しばらく鳴り止まない拍手が〈The Birth and Death of the Universe through Mount Fuji -Band Set Live Version-〉のインパクトの大きさを物語っていた。
アンコールの演目はメンバー同士のじゃんけんで決めて、時間のカウントなし=シーケンス一切なしの生演奏をその日初めて披露。最後に「貧乏ゆすりに誘われて」「転入生インパクト」を演奏し、メモリアルな公演に幕をおろした。



編集 : 西田 健
スペシャル・フォトギャラリー
3776初のバンドセット・ワンマンの模様を完全収録
3776 ディスコグラフィー
PROFILE:3776

富士山ご当地アイドル3776。3776の読み方は、「みななろ」。3776は、富士山の標高。2013年6月22日、富士山世界遺産登録と同時にオリジナル曲『私の世界遺産』で本格デビュー。活動拠点は富士山のふもと静岡県富士宮市。
季節ごとにその姿を変える富士山を、画像で切り取っていくかのように、いくつかのスタイルが共存する3776。最もポピュラーなスタイルは、井出ちよののソロ・ユニット・スタイル。
【公式HPはこちら】
https://m3776.com/