名だたるインディー・ヒップポップ / エレクトロニカ・シーンを渡り歩くグリッチ・ホップ・メイカー、Geskiaを先行ハイレゾ配信

良質なエレクトロニカやヒップホップを展開してるflau、術ノ穴から、多くの作品をリリースしてきたトラックメイカー、Geskia。彼によって生み出されたトラック群は、アンビエントやノイズ、はたまたジャズなど、あらゆるジャンルを取り込む、懐の広い音楽性に彩られている。そして今回、彼がリリースする通算7枚目のアルバム『SFIMT』は、Geskia初のヴォーカル・アプローチがフィーチャーされた作品に。多種多様な声素材を元に作られたメロディー達は、再構成とは到底思えない、楽曲に寄り添った魅力溢れるものばかりだ。そんな本作をOTOTOYでは、どこよりも早く、しかもハイレゾで配信。変化を止めない彼による到達点とも言える本作を、インタヴューとともにお楽しみいただきたい。
Geskia / SFIMT(24bit/96kHz)
【配信形態】
WAV / ALAC / FLAC / AAC(24bit/96kHz)
【配信価格】
単曲(税込) 216円 まとめ購入(税込) 1,800円(税込)
【Track List】
01. Ghost Coast / 02. Afterhours / 03. Priority Minority / 04. Daze Base / 05. Croak Stroke / 06. Ray Delay / 07. Odd Cloud / 08. Fate Rate / 09. Frozen Horizon / 10. Crack Stack
INTERVIEW : Geskia
2008年のflauからのデビュー・アルバム『Silent 77』を皮切りに術ノ穴や海外レーベルなどでのリリースを経て、希代のトラックメイカー、Geskiaによる通算7枚目となる待望の最新アルバム『SFIMT』が完成。本作の特徴は何と言っても収録全10曲にちりばめられたヴォーカルやボイスの存在であろう。その意味ではGeskia初のヴォーカル・アプローチなアルバムとも言える。強烈な存在感と魅惑的な旋律が奏でられた音世界を、是非ハイレゾで聴いていただきたい。
インタヴュー&文 : 小野寺徹(CMFLG)
時代性や気分を察知して自分の思いつくままやりたい
——今までも作品毎に多彩な面を披露してきたGeskiaさんですが、新作『SFIMT』ではさらに今までとは違う、ヴォーカルもフィーチャーしたドリーミーな作品となっていて驚きました。今回作品を作るにあたり、この辺は意識されてましたか?
1枚目『Silent77』の時から声にアプローチした作品は多かったですし、今作に限って「よし、ボーカルものに挑戦だ」といった方向性は特に意識してませんでした。これまでリフレイン的に組み込まれてた声の部分をより楽曲のアクセントとして使っているので、これまで以上に声がフォーカスされているように聴こえるのだと思います。また、あらゆる歌の要素を抜き出して曲の雰囲気を盛り上げているので、その雰囲気がストーリーテーリング的にドリーミーになってるのかな、と思います。
——『Silent Of Light』発売時には「集大成的な作品」という事を仰られていましたが、今作は新たなステップという感じでしょうか。
その通りです。1枚目をリリースした時点であった自分のビジョンを統括した前作で一旦区切りを付けていたので、そういう意味では今作は第2期というか、やっとスタート地点に立って、今自分が必要としてる音楽を作り始めた感じです。
——ヴォーカルをフィーチャーしつつも、決してヴォーカル・アルバムではなく、オートチューンなどを用いてサウンドの一部として構成されているように思われます。この辺は意識されましたか?
様々な素材からボーカル部分を抽出して切り張りをしているので、自然に繋げる為にはフォルマントをいじったりピッチを調整したりしました。その結果、最終的にオートチューンで歌わせる方法がうまく馴染む事が多かったです。曲によっては切り貼りの不自然さに面白みを感じてそのままのものもありますので、曲に合わせてその辺の加工をコントロールしています。ヴォーカルとしての意識よりも曲に感情移入を持たせる要素として声を使っているので、いわゆるヴォーカル素材として綺麗に使おうとは思いませんでした。
——また今作はドリーミーな作品でありながらも、今までのGeskiaさんらしい筋の通ったテクノの影響を感じました。この辺は最近の〈WARP〉や〈R&S〉などのテクノ・レーベルの作品ともリンクするように思えます。最近のテクノのこういった潮流はどのように思われますか?
そういった元々の影響は自然に出ているかと思います。同時代性というか世代と言っては端的ですが、最近活躍してるアーティストの方々も根っこは似たり寄ったりなのかと思います。単純に〈WARP〉を追ってるだけでもキャバレーボルテールからエイフェックスに始まり、オウテカとプラッドを通過し、プレフューズとフライローを体験した後に、現在のダブステップに行き着くわけですから、ごく自然な流れなのかと思ってます。
——一方で今までビートメイカーとしての作品も作られているわけですが、今作のような場合、ビートに関してはどのように作られていますか?
ビートに関してはおおよそ直感に従ってます。神経質なクリックやラフな電子音楽、ビッグビートにブレイクビーツ、ヒップホップやダブステップなど、僕らの世代は丁度それらをリアルタイムで経験できたので、自分の引き出しにいくつものパターンが常に準備されている状態です。時代性や気分を察知して自分の思いつくままやりたいように作ってる感じです。
——フィジカルとしては同じくPROGRESSIVE FOrMからの『Silent Of Light』以来となるリリースかと思います。この間も自身のレーベル〈ARKTEKT〉からのデジタル・リリースやAkmar名義でのリリースもありました。そして今回のGeskia名義での新作『SFIMT』となるわけですが、これらの活動から今作へのフィードバックなどはありますか?
そこはかなり重要な部分で、〈ARKTEKT〉の活動が建設的な経験になりました。前作でそれまでの活動に区切りを付けた時に、自分自身の予定調和の枠から解放された気分でした。Akmarで試したかったアイデアを発散できたり、新しい表現方法やコンセプトを模索できたりしたので、そういった経験がより確信的に自由度が増して今回活かせたと思います。
——また今回は今までと違い、モノクロームの渋いジャケットとなっておりますが、製作にあたり何か要望はありましたか?
〈ARKTEKT〉を始めた時に、ダークなものを主張したのでその流れもあります。最近モノクロ感が新鮮に感じてオーダーしたっていうのもあるのですが、アイキャッチとしての色味は極力避けてグレースケールの深い表現方法を追求したかったです。いつも通りデザインはlenoです。
——『SFIMT』からいくつかミュージック・ビデオを制作中と聞きました。どの曲で進められているのですか? また、Geskiaさんにとってミュージック・ビデオとは?
「Afterhours」はすでに公開しています。Ray Delayはlenoがジャケの世界観で作っていて近日公開出来ると思います。僕自身のアイデアもフィードバックしてもらっているので、この作品が〈ARKTEKT〉的価値観を表現しているものです。あとは「Priority Minority」と「Frozen Horizon」を他のクリエーターの方で進めています。MVとは曲の世界観に没頭できる視覚的要素の補完ですね。
——あとこれはやはり気になる所として、タイトルの『SFIMT』とは何を示していますでしょうか。差し支えなければ教えてください。
曲が数曲できてた時点で、これはGeskiaのアルバムとしていいな、と思い始めた時にタイトルも決めたのですが、アルバムとしてコンパイルする事を考えて、そのモチベーションになる言葉を選びました。アルバムをまとめる過程で曲が集まってくると曲ごとに多様性が生まれて、当初のタイトルに込められた意味合いもより広義なものに変化してはいます。具体的な意味を提示してアルバムを捉えるというより、制作する上での合い言葉に近い存在なのでプロジェクト名とでも思ってもらっていいと思います。
——新作が出たばかりでこう言った事を聞くのもおかしいかもしれませんが、次回作もまた違った作品になる可能性はありますか?
それはまだわかりません。今後も自由にやりたいようにやるだけです。Akmar名義でも何か制作したいですし、〈ARKTEKT〉をもっと有意義にしたい気持ちもあるので、どこからどう手を付けるか自分でもわかりません。
——最後、リスナーの方にメッセージをお願いします。
なぜか日本国内には僕のような音楽をやってるアーティストがほとんどいないので、単純に面白がってもらえれば嬉しいです。
Geskiaの過去作はこちら
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LLLL / Faithful(24bit/48kHz)
2012年よりLLLLの活動を始動、日本人アーティストも多くリリースするアメリカの新興レーベル〈Zoom Lens〉からの1stアルバムを経て、今後の活動に大きな注目が集まるLLLL待望の2ndアルバム。疾走感溢れるアップテンポからじっくり聴かせるダウンビートまで、LLLLの幅広い世界観がアルバムの隅々まで表現された。
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PROFILE
Geskia
自身を取り囲む生活や他人との関わり、またはその世界観の再現をコンセプトに2001年に活動を開始。 初期はCoilやEinsturzende Neubautenに代表されるインダストリアル・ミュージックやテクノ、トリップホップ・ムーブメントに影響を受けていたが、徐々にオリジナルなスタイルを確立。 2008年flauと契約。デビュー・アルバム『Silent 77』を発表し、英WIRE紙など世界中のメディアから喝采を浴びた。これまでにflauより『Eclipse323』、術ノ穴より2ndアルバム『President IDM』、 2009年末には『President IDM』を解体再構築したEP2作をiTunes Storeでリリースした後、2010年にはBajune Tobeta『African Mode』にAdditional productionで参加。〈PROGRESSIVE FOrM〉のコンピレーション『Forma. 3.10』にも参加を果たしている。